コラム

西尾孝之(Takayuki Nishio)
OAW(Oracle AI World)とは、主にアメリカで開催されるOracleの年次イベントで最新情報の発表などが行われています。 2026年は10月25日〜28日にラスベガスで開催されました。
Oracle Cloud Worldから改名して2年目の今年は、AIの「デモ・展望」より「本番・使い方」が主役になった回でした。会場の様子や、主な発表を紹介いたします。今年のAI Worldは「新しいモデルの話」ではなく、すでに動いている仕組みを、どう統制して、どう成果に変えるかに注目されていました。
Oracle CEO Mike Siciliaの基調講演では冒頭に「AI is abundant. Trust is hard to come by. Proven value is harder still.」(AIモデル自体はすでに世の中に溢れている。しかし、それを真に信頼することは容易ではなく、ビジネスで実証可能な価値を生み出すことはさらに難しい)。基調講演で掲げられたこのメッセージこそが、4日間にわたる全セッションを貫く最大のテーマでした。

「何ができるか」を試す時代から、「誰の権限で、どこまで自律させ、その結果をどう証明するか」を設計する時代へ移りました。そのため今年のセッションは、プロンプトの話より「権限・監査・実行範囲の」話が多くありました。AIでアプリケーションを作成した時に、誰がどうセキュリティを担保するのか?私はそれに注目して色々なセッションを聞くことにしました。
個別の話の前に、3つのKeyNoteについて簡単に紹介します。
① KeyNote1
Mike Sicilia「Oracle: where AI means business」
キーノートが始まる前には、ライブバンドが演奏していました。これから始まるOracle AI Worldへむけて気持ちがあがります。そしてOracle CEOが語ったのは「AIを既存の業務システムの中に入れる」という話でした。「AIはありふれています。信頼は得がたい。実証された価値はさらに得がたい。」ですが、組織がすでに依存しているシステムの中にAIを置き、信頼できるデータに触れ、統制下に置き、業務プロセスにつなげたとき、何かが変わります。壇上ではデモと顧客との対話が続き、「画面の上で証明する」ことに時間が割かれました。
②KeyNote2
Clay Magouyrk「Now that AI works, what are we going to do with it?」
「AIが動くようになった今、それを何に使うのか」。AIは、誰が作れるか、何を作れるか、どれだけ速く動けるかを変えています。ですが革命的な技術であっても、すべてを作り直す必要はありません。開発、データ、セキュリティ、インフラの各領域でAIを動かして分かったことは、どこでルールが変わり、どこで基本がより重要になるか。
このセッションではSam Altman(OpenAI CEO)が登壇で、会場は一気に盛り上がりました。
③Keynote3
Larry Ellison「The new Oracle Health application suite and the age of AI」
言わずと知れたLarry Ellision。最近ヘルスケア分野の話題が多いですが、今年も同様でした。ヘルスケア領域の新しいアプリケーションスイートと、その先のAIについての話となります。全体としては、業種特化のアプリケーションにAIを深く埋め込む流れの延長線上にある発表です。

アーキテクチャでセキュリティを守る
AIでアプリケーションを作成した時に、誰がどうセキュリティを担保するのでしょうか。多くのアプリケーションでは、アプリケーションにセキュリティ制御の仕組みを実装されています。例えばアプリケーションで部署情報を読み取って、利用者が許可された機能へのリンクだけ表示させたり、データを表示させたりする場合です。
このような仕組みの時にAIエージェントがデータにアクセスするとどうでしょうか?何もしなければ全てのデータにアクセスできてしまいます。
セキュリティの制御をアプリケーションではなく、アーキテクチャに埋め込むとどう変わるでしょうか?どんな方法でデータにアクセスしても必ずそのセキュリティは適用されます。そのように「アーキテクチャでセキュリティを守る」というキーワードで多くの内容が紹介されました。
「Oracle Deep Trust AI Architecture」という考え方です。セキュリティ・プライバシー・業務ルールを「個々のAIエージェントやアプリ」に守らせるのではなく、基盤そのものに埋め込むというものです。信頼は後から追加(アプリケーション)するのではなく、基盤に埋め込む(強制させる)ということです。
APEXlang ─ 設計書からAPEX画面を生成する
弊社注目技術を1つ掘り下げたいと思います。「APEXlang」です。
まずOracle APEXとは何か。
これは、Oracle AI Databaseに含まれる無償のローコード開発プラットフォームです。ブラウザ上のApplication Builderで画面・レポート・フォームを開発できます。APEXのアプリケーションはOracle AI Databaseの上で動くため、データとの親和性が高く、DBのセキュリティ要素をそのまま引き継げます。
APEXの2026年10月時点の最新版は26.2(10月6日GA)で、SQLcl・ORDS・VS CodeのSQL Developer拡張と連携できます。
そしてAPEXlangは、2026年5月にリリースされたAPEX 26.1で導入されたアプリケーション定義言語(Open Application Definition Language)です。ポイントはアプリケーションの開発言語ではなく、アプリケーション定義言語ということです。アプリケーション開発者は主にAIでアプリケーションの定義(APEXlang)を作成します。AIエージェントはこの言語を読み書きでき、VS CodeやSQLcl、AIエージェントのどのワークフローからでも、同じガバナンスされたアプリケーション定義として活用できます。APEXlangで書かれたアプリケーション定義をもとにAPEXの画面が生成されます。もちろんAPEXlangのアプリケーション定義はAIで自然言語から生成できます。

これらにより次の3つが達成できます。これがAPEXlangを使ってアプリケーションではないところでセキュリティを実装する意味です。
(1) セキュリティの集約
AIが書くのは簡潔な宣言だけで、守るべきロジックは実証済みのAPEXエンジンとデータ層に集まります。そのため、AI生成アプリも信頼できます。
(2) ガバナンス
アプリがテキストになることで、diff、コードレビュー、CI/CD、監査といった標準的な開発プロセスが低コードでも使えます。
(3) AI時代の開発速度
自然言語の要件をAPEXlangに翻訳させ、エンジンが実装するため、開発者は表現と検証に集中できます。従来の簡単な開発はそのまま残り、AIワークフローが加わる形です。

展示ブース
各社のブースだけでなく、F1や救急車、サイバートラックといったオラクル社が関係するたくさんの車の展示、レースゲーム、AIを学べるゲームなど、たくさんのコンテンツが用意されています。たくさんの子犬を抱っこできる癒しエリアもありました。楽しみながら最新技術の情報を収集できます。

グルメ
グルメも充実しています。朝ごはん、昼ごはんつき!おやつの時間には、コーヒーとおやつ!夜はパーティー!充実しすぎて、お腹いっぱい。情報でいっぱいになった頭と、ごはんでいっぱいになったお腹で、満足感しかありません。


