コラム

西尾孝之(Takayuki Nishio)
DCRはオラクルのセキュリティ高度化への取り組みに賛同し、お客様システムのセキュリティ対策に貢献してまいります。
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ここ最近、セキュリティの話で大きく変わったと感じるのは、脅威の種類そのものよりも、攻撃までのスピードです。
これまでも脆弱性が見つかり、悪用されることはありました。
重要な脆弱性が発見されると、緊急パッチがリリースされ、急いで適用した経験がある方も多いと思います。
この流れ自体は、AI時代になっても変わりません。
ただし、AIの進化によって、「脆弱性の発見から、悪用の検証、攻撃」までが圧倒的な速さで行われるようになったのは大きな違いです。
一例では、脆弱性の発見から悪用確認までの期間が、2022年には1,436日あったのに対し、2025年には26日まで短くなったというものもあります。
今までのように「問題が見つかってから対応する」では、間に合わない場面が増えてきたということです。
AIが進化したことで、攻撃する側はこれまで以上に速く、広く、効率よく弱点を探せるようになってきています。
しかも、それが自動化されていくと、対応が遅れている環境、設定が甘い環境、古いまま残っている環境が攻撃されやすくなります。
今必要なのは、何か特別な新対策を1つ入れることよりも、基本のセキュリティ対策を速く継続して回せる状態を作ることです。
人が時間をかけて調べていたことを、今ではAIが短時間で広く試せるようになっています。
脆弱性の探索、設定不備の洗い出し、攻撃経路の検討、悪用コードの下書きまで、以前よりはるかに短時間で進むようになってきました。
これは、何か1つの大きな弱点だけが狙われる世界ではなく、環境のバージョンが古い、設定が甘い、そういう環境全体が狙われやすくなるということでもあります。
昔は「うちはそこまで狙われないだろう」と思えた環境でも、AIによって攻撃側のコストが下がれば、対象はもっと広がります。
大企業だけでなく、中堅企業や個別業務システムも十分に対象になり得ます。
だからこそ、セキュリティ対策は「高度なことを一部でやる」よりも、基本を確実にやることのほうが、むしろ重要になってきています。

オラクル社「AI Cybersecurity Threats」資料から抜粋
最終的に守りたいものは何か。答えはシンプルで、データです。
システム障害やサイバー攻撃が起きたとき、サーバやミドルウェアは時間をかければ再構築できるかもしれません。
しかし、業務データが失われたら、それは時間をかけても戻せないことがあります。
ランサムウェアでも、最終的に狙われるのはデータです。
業務を止めるために、データを暗号化する。
復旧させないために、バックアップまで壊す。
最近の対策でよく言われる「侵入を前提に考える」というのは、まさにこのためです。
入られないようにすることも大事ですが、入られた後でも戻せるようにしておくことが、同じくらい大事になっています。
その意味で、まず優先すべきなのは、データを守ること、そして確実に戻せることです。
Oracleには、この考え方に近い仕組みとしてZero Data Loss Autonomous Recovery Service(ZRCV)があります。
これは単なるバックアップ保存先ではなく、データベースの変更をリアルタイムで保護し、障害やランサムウェア発生直前に近い時点まで戻せるようにする仕組みです。
保護対象のトランザクションはリアルタイムでイミュータブル領域に送られ、復旧時点の目標は 1秒未満のデータ損失 に抑えられるとされています。
ここで重要なのは、「バックアップを取っている」だけではないという点です。
ZRCVでは、バックアップは暗号化され、保持ポリシーによってイミュータブルに保護できます。
さらに、バックアップはデータベースと論理的・物理的に分離された領域で管理されており、権限を持つ管理者であっても勝手に削除したり、保持期間を短くしたりできない設計になっています。
加えて、Oracle Databaseの仕組みを理解したうえでバックアップを継続的に検証するため、「バックアップはあるけれど戻せない」というリスクを減らせます。
特にAI時代は、攻撃のスピードが上がるだけでなく、被害も短時間で広がりやすくなります。
だからこそ、データ保護と復旧設計は、最重要となる基本対策だと思います。
もちろん、データだけ守ればよいわけではありません。
システム全体を守るための対策、つまり侵入されにくくする対策も必要です。
では、AI時代になって、やるべきことがまったく変わったのか。
やるべきことは昔から分かっています。
変わったのは、それを後回しにできる時間がなくなったことです。
たとえば、OSやデータベースのパッチはどれくらいの頻度で当てているでしょうか。
日本の現場では、どうしても「塩漬け」になりやすいところがあります。
業務を止められない、検証に時間がかかる、関係者調整が大変。理由はよく分かります。
しかし、脆弱性が攻撃されるまでの時間が圧倒的に短くなっている以上、パッチ適用は「余裕があればやる」ものではなく、運用として回せるようにしておくべきものです。
ここが一番現実的な悩みだと思います。
必要なのは分かっている。
でも、毎回人手で回すのはつらい。
だったら、できるところは自動化に任せるのも立派な選択肢です。
その分かりやすい例が、Oracle Autonomous AI Databaseです。
これはOracle Cloudのフルマネージド型データベースで、マルチクラウド環境でも利用でき、パッチ適用や保守のかなりの部分を自動化できます。
実際、Autonomous AI Databaseでは、毎週のようにパッチが自動適用されます。
しかも、パッチ適用はオンラインで行われ、データベースを止める前提ではありません。
パッチだけでなく、運用負荷の高い部分――たとえばチューニングや領域管理、バックアップ、監視なども自動化の範囲に入ってきます。
運用負荷はかなり下がります。
とはいえ、
「勝手にデータベースのパッチが入るのは不安だ」という感覚はとても自然です。
ここには、2つの考え方があると思います。
1. SaaSと同じように考える
皆さん、何かしらのSaaSアプリケーションは使われていると思います。
その多くは、いつパッチが適用されたかを気にせず使っているのではないでしょうか。
サービス提供側が更新を続け、利用者はその恩恵を受ける。
Autonomous AI Databaseも、考え方としてはかなりそれに近づいています。
データベースを“自分で運用するもの”から、“継続的に最新化されるサービス”として扱う発想です。
2. それでも本番は心配なら、先に試す
もう1つは、「基幹システムで使っているから、やはり事前確認はしたい」という考え方です。
これは当然ですし、むしろ健全だと思います。
そのための仕組みも備わっています。
でも、クラウドのサービスをうまく使えば、自動化できる部分が増え、毎週の確認運用も現実的になります。
ここまでデータベース寄りの話をしてきましたが、
システム全体としても、やはり基本対策は必要です。
その意味で、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)では、
基本対策を“人手だけに頼らず回しやすくする”ための仕組みが最初から多く用意されているのは大きいと思います。
たとえば、OCIには次のような機能があります。今までは有償製品を使っていたようなサービスでも無料の機能が多くあります。
| Cloud Guard | 設定不備や不審な挙動を監視し、問題を見つけやすくする |
| Security Zones | 危険な設定変更そのものを抑止し、安全な状態を崩しにくくする |
| Vulnerability Scanning Service | ホストの脆弱性や開放ポートを確認する |
| Data Safe | データベースの設定評価、ユーザー権限の可視化、監査、機微データ発見、マスキングなどを支援する |
クラウドを使うメリットは単にサーバを借りることではなく、基本のセキュリティ運用を仕組みで支えやすいことにもあります。
最後に、基本の「き」として、あらためて見直したい観点をリストします。
難しいことを全部一気にやる必要はありません。
でも、AI時代は、後回しにしていた基本がそのまま弱点になりやすい時代です。
だからこそ、
まずはデータを守ること、
次に、基本対策を早く回せる状態にすること、
この2つを優先して考えるのがよいと思います。
AIによって、攻撃のスピードは人手の世界から機械の世界に入りました。
脆弱性の発見から悪用までが短くなった今、「見つかってから考える」では遅い場面が増えています。
それでも、やるべきことが大きく変わったわけではありません。
人手だけに頼らず、仕組みで回せるようにすること。
それが、AI時代のセキュリティ対策で一番大事なことだと思います。
OCIやクラウドセキュリティについてお悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。