コラム

Oracle Cloud Infrastructure(OCI)とは?OCIの移行事例を紹介

OCI移行事例

西尾孝之(Takayuki Nishio)


株式会社第一コンピュータリソースは、基幹システムのクラウド化に踏み切りました。
結果としては利用者に気づかれずにOracle社のOCIを使ったクラウド化が完了。気づかれないということは表面的な問題は出ていないということです。システムを管理する自社システム部門としてもコスト削減を実現できました。
基幹システムのクラウド化にあたり、何をどう検討し、課題を乗り越えてきたのか?「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」の特徴や構成について解説しつつ、自社の事例を紹介いたします。

▼オラクル社サイトにも掲載中

▼資料ダウンロードはこちらから

Oracle Cloud Infrastructure(OCI)とは?

OCIとは

OCIとはOracle社が提供するクラウドサービスです。クラウドサービスとはインターネット経由で提供されるサービス(仮想サーバ、データベース、ストレージ等)です。今までは自社内やデータセンターに物理的に導入していたハードウェアを、インターネット上に配置をすることになります。今までは資産として所有していたサーバ類が、サービス利用の形に変わります。

パブリッククラウドサービスには、Oracle社のOCI以外にもAWS・Azure・GCPなどいくつもあります。Oracle社は最後発のクラウドサービス事業者です。しかしながら、2022年10月、デジタル庁におけるガバメントクラウド整備のためのクラウドサービス事業者に選定され、一気に注目が集まってきています。最後発ならではの痒い所に手が届く高度なサービスが提供されています。

Oracle Cloud Infrastructure(OCI)の特徴

良いサービスを圧倒的な低価格で!

同じ性能のサービスで比べたときに、他社クラウド事業者よりも価格面で有利です。また各種無料枠も多いのが特徴です。例えば外部とのネットワーク通信料金を比べてみましょう。OCIは10TBまで無料ですが、他社クラウドは1GB以上は有料となるものもあります。コストカットを目指す企業におすすめのクラウドサービスです。

最高のデータベース環境!

もともとデータベースを得意とする会社だからこそ実現できたデータベースサービス。Oracle社のオンプレミス製品と同じ環境が用意されています。全自動でバックアップを取得し、パッチ適用も索引作成も行うAutonomousDatabase!オンプレミスの環境で培われた高可用性環境RAC!これらのDatabaseを使用できるのはOCIだけです。またストレージパフォーマンスは段違いの性能です。
また、OracleDatabase以外にも、MySQLやPostgreSQL、Marcketplace経由でSQLServerも用意されています。

高いセキュリティレベル!

クラウドを利用するにあたり気になるのはセキュリティ。気づかず情報が公開されているというのは、絶対に避けなければならない状況です。OCIでは、様々な設定・通信は基本的には使用不可となっており、必要なものを許可していくという考え方のため、うっかり公開されていることを防ぎやすくなっています。またクラウドサービス事業者として国が公的利用に認めるほど高いセキュリティレベルを実現しています。

Oracle Cloud Infrastructure(OCI)の構成

IaaS、PaaS、SaaSという言葉を聞いたことはあるでしょうか?

IaaS

IaaS(Infrastructure as a Service)とはシステムの基盤となるようなハードウェアやネットワーク機能を提供するサービスです。仮想マシンやロードバランサなど画面からの操作で作成できます。いままでデータセンターやサーバ室に配置していたハードウェア・インフラストラクチャに変わる部分になります。クラウドサービスは必要な時に使用し、不要になったら停止すればコストもかからないため、非常に柔軟にサーバなどの追加削除が可能です。
IaaSでは、他にも「Google Compute Engine」「Amazon Elastic Compute Cloud」などがありますが、OCIは他社と比較して最新リリースのコストパフォーマンスが非常に高くなっています。

PaaS

PaaS(Platform as a Service)は、システムを開発・実行するためのプラットフォーム環境です。今までミドルウェアの構築や開発する人が行っていたものが、すでに構築された状態で提供されます。例えばデータベースサービスがあります。OracleDatabaseのEnterpriseな機能であるRAC(Real Application Clusters)や、Data Gaurdなども、画面からの簡単な操作で構築可能です。オンプレ環境と比べて簡単すぎて驚くほどです。OCIのPaaSは、ビジネスに必須のデータウェアハウスやトランザクション・アプリケーション、ビックデータ分析まで、データ管理のあらゆるニーズに対応可能です。

SaaS

SaaS(Platform as a Service)は、アプリケーションズともよばれ用途にあわせて作成されたアプリケーション利用環境になります。一例をあげるとERPやHCMといったアプリケーションです。

これらの中でも特にIaaS、PaaSが、Infrastructureサービスとも呼ばれます。システムの基盤部分を構成するサービス群です。

Oracle Cloud Infrastructure(OCI)を導入するメリット

まずコスト面で大きく2つのメリットがあります。
1つ目は他社クラウドと比較して、同スペック・高スペックを低価格で提供されます。分かりにくいところとして、OCIの1ocpuは他社クラウドの2vcpuに相当します。
2つ目に無料枠が多くあります。特にアウトバウンドのデータ転送量にかかる部分は10TBまで無料と他社に比べて圧倒的です。

次にOracleDatabaseの利用に関する部分です。ストレージに関するパフォーマンス上限(IOPS)は、他社の追随を許しません。またオンプレのワークロードや管理手法をそのまま使用できる割合が大きいこともあげられます。他社のOracleサービスではDBA管理の部分でクラウド独自の手法が多くあり、独自手法を学習する必要があります。

【OCI移行事例】自社基幹システムをOracle Cloudへ移行

基幹システムをOCIへ移行

基幹システムクラウド化検討の背景

基幹システムをクラウド化。自社システム部門において、大きな課題でした。年々膨れ上がるデータ量、リモートワーク導入の働き方の変化。世の中のクラウド化の事例が多くなってくるなか、自社でもコストメリットを受けられるのか。なぜクラウド化に踏み切ったのか、実例をもって紹介いたします。

システム構成図

クラウド化したシステムの構成図です。
クラウドサービス利用のメリットとしてスモールスタート・後からの拡張がしやすいことがあげられます。まずは一部のサーバをクラウド化し、徐々に範囲を拡大する予定です。初めに使用した主なクラウドサービスは以下の通り。
・BaseDB (Oracle Database)
・BlockVolume
・Compute (Windowsサーバ)
・IPSec-VPN
・DNS

システム構成図

自社システム部門の課題

DR対策とコスト削減。これが大きな目的でした。
・オンプレサーバの物理的な管理(停電、定期バックアップ及びバックアップデータ疎開)に工数を取られており、運用工数の削減が課題となっていた
・1つのデータセンター内に機器が設置されており、BCP観点での耐障害性が課題となっていた
・本社と各拠点とのネットワークが本社中心のトポロジーとなっており、本社停止時に業務継続が困難な構成となっていた

ビジネス部門の課題

SIerとしてのノウハウ蓄積。お客様の基幹システムクラウド化を推進するのに自社がオンプレでは問題外。

・お客様へクラウド提案するのにIT企業として社内のシステムがクラウド化してないのは疑問に思われがち。
・実務としてシステムクラウド化の開発経験が少ない状態となっており、社内システムをクラウド化することにより、そのノウハウ蓄積も同時に狙う。
・新たな中期事業計画の立ち上げが進んでおり、DX促進・検討を進めていこうとする中で、機器調達に時間がかかり(当時は半導体不足が顕著だった)検討・検証環境の準備にも時間がかかる。

これらの課題を解決するために

オンプレ、クラウド化のそれぞれについて、指標を決めて比較しました。例えば、ランニングコストは今より下がること、パフォーマンスが悪くならないこと、従来のスキルに多少の追加で運用できること、クラウド化によるメリット、などを比較し、OCI採用の効果を測定しました。最終的にクラウド化を行いましたが、利用者となる社員にはほとんど気づかれず、クラウド化を達成しました。

クラウド化にあたり想像していたデメリットと得られたメリット

□新しい仕組みとなることで人件費は増加しないか

もちろん新しいものを覚える必要はあります。今回、クラウド化にあたっては、最初の導入時点で弊社Oracleグループにより様々なクラウド機能を使った自動化・強化が行われました。バックアップや、DRもその1つです。クラウドサービスには様々な機能がすでに備わっています。それらクラウド機能を使って実装された状態で運用が開始できたため、実際にはランニングコストは半減することが出来ています。
定期的な法廷点検や、パッチ適用、サーバのメンテナンスなど、人件費としてのコストは激減。特にサーバ停止回数は半分以下となり、システムを利用する社員への稼働率もあげることができました。
また定期的にシステムの稼働状況の監視や稼働報告を行っていましたが、Oracle Cloudの管理コンソールが分かりやすいため、確認する手間も半減できました。

□システムの機能的な変更

クラウド化を行うにあたり、他システムとの連携やオンプレ環境との連携がよく課題にあがります。オンプレ環境との連携ではネットワークパフォーマンスを懸念していましたが、事前の検証で問題ないことが確認できました。データベースはそのままOracleDatabaseを使用できたことが、スムーズに移行できた1つの理由でした。また他システムとの連携ではデータベースとのファイル入出力で課題が想定されました。弊社内有識者の力を借りて解決できましたが、オンプレからPaaSに変更する場合は、何かしら変更が必要になることもありそうです。

□クラウド化としてのメリット

オンプレとクラウドを比較する際に、まずコスト面に目がいってしまうことが多々あります。当然検討する必要がある比較ポイントです。しかし、重要な比較ポイントとして忘れないでいただきたいのが、コスト増になったとしてもクラウド化で得られるメリットを考慮するということです。例えばOCIのOracleDatabaseで特徴的なものとして暗号化があります。オンプレのOracleDatabaseではEnterpriseEditionのオプションであるAdvancedSecurityが必要な暗号化機能が標準で備わっています。DR対策で、別のリージョン(東京と大阪など)にサーバやデータを配置するということも、オンプレと比べると圧倒的低コストで実現できます。そのようにクラウド化するからこそ新たに実現できることも考慮して、比較が必要です。

クラウド化の結果

最終的に利用者となる社員にはクラウド化したことを気づかれずに切替が完了し、その後も問題は発生していません。当初の目的であったコスト削減、低コストでのDR対策も実現できました。
またこの実績や課題を踏まえて、お客様の基幹システムクラウド化にも取り組み、成功をおさめています。

クラウド化効果のまとめ

Oracle Databaseが柔軟に利用可能な点やセキュリティ、コストパフォーマンス、安定性を評価し、OCIを採用しました。
その結果以下の効果を得ることができました。
・ 利用するリソースの最適化により、ランニングコストを約30%削減
・オンプレミスでDR対策を行う場合と比較し、約60%の費用で実現

クラウド環境のさらなる活用

クラウド化のメリットとして、拡張しやすいことがあげられます。今回、基幹システムをクラウド化しましたが、まずは必要最低限の部分をクラウド化しています。他にも多数のシステムがあるため、1つずつクラウド化を進めていきます。
これがオンプレの場合であれば、サーバ調達から検討する必要があり調達にも時間がかかります。また時期がずれたことで異なるハードウェアとなり保守や管理も煩雑になることが想定されます。その点、クラウドは簡単な画面操作で新しい仮想サーバを作成できます。非常に拡張がしやすい仕組みになっています。
また、さらに発展させ、単なるサーバの置き換えではなく、クラウド特有のサービスを使った機能拡張やさらなるコスト削減を目指していきたいと思います。

まとめ

OCIとはOracle社が提供するクラウドサービスです。最も後発ながら、痒いところに手が届く高度なサービスを展開しており、注目を集めています。弊社ではここで紹介した以外にも多くのクラウドサービスを活用して、お客様のクラウド構築からサポートまで支援させていただきます。
ぜひ一度ご相談ください。

▼オラクル社サイトにも掲載中

▼資料ダウンロードはこちらから