コラム
2019年に経済産業省はIT人材の人手不足が、2030年には最大で約79万人に拡大する試算結果を公表しました。
また公表内容に 『IT人材は育成に時間がかかるため、個々のIT人材に対する十分な教育・研修の機会を、企業が自社だけで提供することは、もはや難しくなっている』 とも記述されています。近年ではオフショア活用はコスト削減だけでなく、IT人材の人手不足解消手段としても需要が高まっています。しかしオフショア活用ならではの懸念事項や、オフショア活用だけでは解決できない課題点の解決策について解説します。
・若年層の人口減少に伴って、2019年をピークにIT関連産業への入職者は退職者を下回り、IT業界の人手不足は悪化に向かうと予想されている。
・IT人材の平均年齢は2030年まで上昇の一途をたどり、高齢化が進展することも予想されている。
・IT需要予測から推計されるIT人材需要から2030年までのIT人材の人手不足数を推計すると、40~80万人規模でIT人材の人手不足が生じる懸念がある試算。
「DX白書 2023」ではIT人材の現状について、DXを推進する人材の「質」の確保について、「やや不足している」が2021年度の55.0%から2022年度は34%と減少している一方、「大幅に不足している」は35.5%から51.7%に増加しており、明確なIT人材の人手不足を回答する企業が半数にまで増加していると記述されており、IT業界における人手不足は深刻化しています。IT人材の人手不足の理由として「労働人口の減少」「IT需要の拡大」「IT人材需要の変化」が挙げられます。
出展:経済産業省「ITベンチャー等によるイノベーション促進のための人材育成・確保モデル事業」
少子高齢化の進行により、我が国の生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少しており、2050年には5,275万(2021年から29.2%減)に減少すると見込まれています。生産年齢人口の減少により、労働力の不足、国内需要の減少による経済規模の縮小など様々な社会的・経済的課題の深刻化が懸念されます。
今後も若年層の採用難や従業員の高齢化といった雇用問題が深刻化していくため、労働力の確保はますます厳しくなることでしょう。IT人材の確保も同様に、厳しくなることが予想されます。
出展:内閣府(2022)「令和4年版高齢社会白書」
世界のICT市場(支出額)は、スマートフォンやクラウドサービスの普及などにより、2016年以降増加傾向で推移している。2022年は578.9兆円(前年比19.8%増)と大きく増加し、2023年は614.7兆円まで拡大すると予測されている。
日本のICT市場(エンタプライズIT支出額)は、2022年には27.2兆円(前年比5.2%増)と大きく増加すると見込まれている。産業別では、銀行/投資サービス(同7.9%増)や政府官公庁/地方自治体(同7.7%増)が大きく増加した。自動化・省力化によるコスト削減やレガシー・システムの刷新、効率化のための投資増加に加え、新型コロナウイルス感染症に係る各種制限の緩和により、幅広い業種での投資拡大が期待される。
出展:Statista(ガートナー) 令和5年版 情報通信白書
IT技術の進展により、IoTエンジニア、データサイエンティスト、クラウドエンジニア、セキュリティエンジニアなどの専門家が求められています。これらの変化に対応するため、ITエンジニアは幅広いスキルを持ち、常に学習と最新情報を更新しておく必要があります。
□1. IoTの進展
IoTにより、ヒト・モノ・組織がネットワークに接続され、大量のデジタルデータが生成・収集・蓄積されています。これに伴い、IoTエンジニアの需要が高まっており、ハードウェアやソフトウェアのスキルを持つ専門家が求められる。
□2. ビッグデータの利活用
ビッグデータの活用が注目されており、データサイエンティストの需要が高まっています。ビッグデータを分析し、事業に有益な活用方法を提案するスキルが求められる。
□3. クラウドエンジニアの不足
クラウドの普及に伴い、クラウドエンジニアの需要が高まっています。クラウドサービスの設計・構築・運用・保守を行うスキルが求められる。
□4. セキュリティエンジニアの増加
サイバーセキュリティの重要性が高まっており、セキュリティエンジニアの需要が増加しています。システムのセキュリティ設計や対策を行うスキルが求められる。
「労働人口の減少」「IT需要の急速な拡大」「IT人材需要の変化」により、IT人材の人手不足の深刻化はますます悪化すると予想されます。自社の限られたIT人材を最適配置し、不足するIT人材は新たに確保しなければ課題解決しません。『IT人材は育成に時間がかかるため、個々のIT人材に対する十分な教育・研修の機会を、企業が自社だけで提供することは、もはや難しくなっている』と、2019年の経済産業省の試算結果にも記述されています。新卒を採用して教育するだけでは、ビジネスの機会損失を招いたり、そもそも自社だけでの育成は厳しい状況です。他社にIT人材を求めても、日本全体でIT人材の人手不足となっている状況なので、日本国内でIT人材の確保は困難。運よくIT人材が確保できたとしても、これまで以上のコストがかかることでしょう。このような状況で、不足するIT人材をどのように確保すれば良いのでしょうか。そこで再注目されているのが、オフショア活用になります。本コラムでは、オフショア先の「テレワーク編成されたラボラトリー(ラボ)開発」について解説させていただきます。
日本国内での作業をテレワークで行える企業におすすめなのが、「テレワーク編成されたラボ開発」です。ミャンマーDCRでは、2020年3月に完全テレワークへ移行完了しました。
・VPN環境の構築:全社員対応可
・経験の蓄積:テレワーク時のルール、コミュニケーションツールの整備
・通信環境対策:全社員に通信キャリアのSIMカード配布、自宅のFTTXの契約促進(※会社が一部経費負担)
これまでの客先常駐型のラボ開発や、客先常駐しているブリッジSEやラボリーダーが、オフショア先のラボメンバーに作業指示するラボ開発のメリットに加えて、大きく3つのメリットがあります。
【テレワーク編成されたラボ開発のメリット】
①コストメリットの最大化!
②従来より柔軟な要員構成が可能!
③テレワークによるクラウドIT人材確保!
新しいオフショア活用法について解説していきます。
オフショアのIT人材を日本派遣する場合、たとえそれがブリッジSEとラボリーダー分だけであったとしても、渡航費や滞在費のコストが必要となります。また受入れ準備にも工数が必要となり、コストメリットが下がります。オフショア先でテレワークによるラボチーム編成が可能な場合、物理的な準備は殆ど不要となるので、コストメリットは上がります。
ミャンマーDCRのエンジニアとお客様は、コミュニケーションツールを使用して遣り取りしていただきますが、ミャンマーDCR社員は全員が日本語対応可能なので、WEB会議を含めてすぐにでもオフショア活用が可能です。
作業指示については、日本語堪能なラボリーダーに、お客様が直接指示することが可能なので、ブリッジSEは不要です。また、ラボリーダーが開発コーディネーターを担うイメージで、スケジュールの回答や管理を行いますので、お客様によるマネジメントも不要です。ミャンマーDCRがサービス提供する「テレワーク編成されたラボ開発」なら、コストメリットの最大化が可能です。
「テレワーク編成されたラボ開発」は、コストメリットを最大化するだけでなく、IT人材確保においても大きなメリットがあります。テレワーク前提でIT人材確保を行うので、居住場所に制限を受けることなくIT人材確保が可能となります。
ミャンマーDCRは社員数:430名(2023年4月現在)、所在地:Yangon本社、Mandalay支店となっていますが、必要なIT人材が、Yangon本社、Mandalay支店のどちらに在籍していても、ラボチーム編成が可能です。
IT人材を固定して中長期的に開発体制を維持することは、人材確保とコストの両面で難しいですが、ミャンマーDCRがサービス提供する「テレワーク編成されたラボ開発」を活用することで、柔軟なIT人材確保を可能にします。
これまでのラボ開発はITエンジニア5名程度を継続確保の前提で、且つ開発期間が長期で大規模な開発ほどスケールメリットが出やすく大きくコスト削減できました。しかし、繁忙期と閑散期の作業量に差がある場合には、閑散期の作業量では人材リソースの空きが発生して人件費が高くなり、コストメリットが下がる課題がありました。このように作業量にムラがある業務の場合には、閑散期(または通常月)に合わせた人数でラボチームを編成し、繁忙期には一時的にラボメンバーの増員を依頼することで、固定費を変動費に替えてコストメリットが下がる課題を解決することが可能です。このような柔軟な対応が可能になったのも、「テレワークによるクラウドIT人材活用」による効果です。
2024年3月時点で、日本国内におけるIT人材の人手不足改善傾向の兆しは見受けられません。日本国内だけではIT業界人手不足を解決できないのであれば、オフショア活用を解決策の一つとして検討する必要があります。
しかしこれまでと同じような活用方法だけでは、IT人材の人手不足を解消することは難しいでしょう。ホームページや業務システムの保守作業は小規模な開発ですが、ナレッジ習得したITエンジニアを長期間確保する必要があります。固定されたITエンジニアの長期間の確保は、オフショアを活用しても厳しいですが、チームで保守体制を担保するラボ開発であれば対応が可能です。さらに柔軟にラボチームの構成を可能にする、テレワーク編成されたラボチームを活用することで、IT人材確保とコスト低減の実現を可能にします。