コラム
西尾孝之(Takayuki Nishio)
株式会社第一コンピュータリソースの西尾は、2023年7月にリリースされたORACLE MASTER Platinum DBA 2019に一番のりで合格し、オラクル社サイトにインタビューが掲載されています。
普段の業務ではOracle製品を使ったコンサルタント、Oracle製品の研修講師を担当しています。そんな西尾からORACLE MASTER資格を取得するための秘訣を紹介いたします。
日本オラクル株式会社が認定制度で、試験の難易度によって4段階に分けられています。オリンピックのメダルのように金銀銅があり、入門レベルからORACLE MASTER DBA Bronze 2019、ORACLE MASTER DBA Silver 2019、ORACLE MASTER DBA Gold 2019とあります。これらは選択式の問題です。またGoldの上に最上位として、実技試験であるORACLE MASTER DBA Platinum 2019があります。実技試験は2日かけて行われ、非常に難易度の高い試験となっております。Javaやデータベース、Cloudなどいくつか種類がありますが、本記事ではデータベースを扱います。
資格取得のメリットは大きく2つあると考えています。
1つは社内外での評価。もう1つは資格取得を目指す過程で得られる知識です。
1つ目は想像しやすいと思います。ある程度の知識があることをアピールする有効な手段であることは間違いありません。経歴を見たときに資格がある人とない人では見栄えが違います。社会人になってからも意外と経歴を出すことがあります。
2つ目は普段使わない知識の取得・体系的な知識の整理です。業務で行っていることはどんどん出来るようになっていくと思いますが、業務で使わない知識・機能は習得する機会が少ないと思います。しかしながら、その知識を知っていると今の業務が楽になるというものもあるでしょう。そのように資格取得を目指す過程で様々な知識を習得できるのは大きなメリットです。
資格取得を目指すために、まずはオラクル社のサイトから試験の概要や試験範囲を確認しましょう。
[オラクル社サイト:資格情報|https://www.oracle.com/jp/education/certification/examlist-172597-ja.html#1]
試験時間や問題数、合格ラインや試験の範囲を確認できます。試験内容を把握することは資格取得への第一歩です。
確認した試験範囲に沿って学習を進めていくことになりますが、ORACLE MASTERのBronzeからGoldレベルまでは、資格試験対策本もいくつか発売されています。オラクル社公式からは、Eラーニングが発売されております。こちらは演習環境も付属しているものもあるため、簡単に実機演習を行うことができます。また、オラクル社からは無料のセミナーが資格取得支援セミナーで開催されることもありますので確認してみてください。
[オラクル社サイト:セミナー情報|https://www.oracle.com/jp/education/news-172121-ja.html]
BronzeからGoldまでは、試験対策本やマニュアルをしっかり勉強すればOracleを操作したことがなくとも資格取得することはできます。ただし、机上だけの勉強では身に付きません。資格を取得していても実力のない・操作ができない状況になりえますので、実機での確認をしていきましょう。データベースのインストールや、設定を行うことがお勧めです。またPlatinumは実技試験のため、机上の学習だけでは合格できません。勉強方法については次の項目から詳しくみていきます。
Goldまでのように市販の試験対策本はありません。オラクル社のEラーニング「ORACLE MASTER Platinum ラーニング・サブスクリプション」が唯一の教材となります。
[オラクル社サイト:Eラーニング|https://education.oracle.com/products/ls_84765]
比較的価格の高い教材になりますが、例えばデータベースのチューニングや、RAC構築など、様々な演習がすぐに行える状態で提供されるため、費用を捻出できる方は使用してみましょう。私は使用しませんでした。
有償の教材以外では不定期にOracle Universityのオンラインセミナー「ORACLE MASTER Platinum DBA 2019への道」が開催されているため、これの受講は必須です。試験概要や試験時間など、公式サイトより深い情報が紹介されます。もともと公開されている情報が少ないため、少しでも情報が得られるものは積極的に見つけに行く必要があります。情報が少ないことも資格取得に向けた1つのハードルになります。
あとは実機環境とマニュアルが最大の教材になります。試験範囲を参照し、該当の操作を繰り返し行うことが最大の学習方法です。後ろの項目で環境の作成や試験範囲の読み解きを行います。試験問題を想像しながら、様々な操作を行いましょう。
Platinum試験は実技試験です。実機での確認は必須です。他の試験とは違い試験中マニュアルを参照することが可能ですが、悠長に調べている時間はありません。問題数がかなり多いため、基本的にはマニュアルを見なくても設定ができるスキルを身に着け、コマンドや設定方法が覚えきれなかったものはマニュアルを参照する程度で考えておくのが良いかと思います。そのためには環境を作成し、繰り返し操作を実施します。それではどのような環境で操作の練習をしていきましょうか。オラクル社サイトの試験概要から読み解いていきます。
[オラクル社サイト:Platinum試験情報|https://www.oracle.com/jp/education/ocm-3607006-ja.html]
オラクル社のサイトに環境情報が掲載されています。2023年7月時点では以下の環境です。
・Oracle Linux Server release 7.8
・Oracle Database 19c Enterprise Edition Release 3 (19.3.0)
・Oracle Grid Infrastructure 19c Release 3 (19.3.0)
・Enterprise Manager Cloud Control 13c Release 3 (13.3.0)
試験勉強に向けてまずはこれらの環境を作成しましょう。
Windows環境しか触ったことがない方は、Linuxの基本操作からおさえていく必要があります。
さらに、試験範囲を確認すると以下のキーワードが読み取れます。
・Oracle Real Applicataion Clustersの構成
・Oracle Data Guardの構成
・マルチテナントアーキテクチャの構成
このことから、1台のサーバだけでなく、クラスタやDR環境として複数台のサーバ構成を学習する必要があることが読み取れます。マルチテナントのデータベース、RAC環境、Data Guard環境、Cloud Control環境が必要そうです。近年は仮想環境が作りやすくなっていますので、それらが活用できます。オラクル社のものであればVirtual Boxという仮想環境が使用できます。これはノートPCなどにも仮想な環境が作れる使いやすい無償製品です。仮想環境では仮想マシンのバックアップが簡単に取得できますので、試験学習のためOracleの設定しては元に戻してやり直す、という繰り返し学習が簡単に行えます。初めてPlatinum資格に挑戦したのはは9iでしたが、そのころは今ほど仮想基盤が気軽なものではなく、2台のPCを使って学習したことを覚えています。
まずラーニングサブスクリプションを購入された方は、それをもとに学習していきましょう。そこに含まれる研修コースの内容からも試験範囲を想像できます。以下のコースが含まれています。
・Oracle Database 19c: マルチテナント・アーキテクチャ
・Oracle Database 19c: Clusterware管理ワークショップ
・Oracle Database 19c: ASM管理ワークショップ
・Oracle Database 19c: RAC管理ワークショップ
・Oracle Database 19c: Data Guard
・Oracle Database 19c: パフォーマンス・チューニング
・Oracle Database 19c: SQLチューニング・ワークショップ
・Oracle Database 19c: バックアップ・リカバリ
・Oracle Database 19c: 経験者のための管理ワークショップ
多くは演習問題と演習環境があります。実機操作を行う演習問題があるということは、Platinum試験の問題に近いものがあるかもしれません。オラクル社の演習問題はこのようなものだというイメージをつけるために役立ちます。
購入していない方にもこれは大きなヒントです。各コースに含まれる内容はEラーニングサイトで確認できるため、試験の内容を想像できます。データベースをインストール・構築は当たり前で、データベースのより高度な機能が問われることがわかります。
また、ORACLE MASTER Goldの範囲と、Platinumの範囲は似ているようにもみえます。そうすると、Goldの試験範囲を実機で行えるようになるというのが1つの目標といえます。
Goldの試験範囲はかなり広いため大変ですが、Goldの試験範囲(資格対策本やEラーニング)を順番に実機確認してみましょう。当然試験には出ない内容もあるかと思いますが、かなり実力がつくかと思います。特にマルチテナントデータベースを操作したことがない方は必須です。Goldの勉強をしているとめげそうになるくらい試験範囲が広いです。ただしPlatinumはそれ以上ですので、それでめげているわけにはいきません。
・Eラーニングの目次から試験範囲を推測
・Goldの試験範囲は実機でできるようにする
・Platinum試験範囲から読み解く。RAC,DG,CloudControlも必要
Platinum試験に合格するには「どれだけ勉強すればいいですか?」と、よく聞かれます。これはかなり難しい質問です。試験範囲が広いことと、それを操作した経験によって大きく左右されます。例えばRAC環境の構築、DataGuard環境の構築、Cloud Control環境の構築、これらの経験有無で大きく異なるのは想像できるのではないでしょうか。
1つの指標としてEラーニングに含まれるコースの学習時間をみると 150時間以上あります。まず講義を受けるだけでも時間を要します。そこから演習問題や繰り返し学習でもっと時間が必要です。
私の経験からいうと、一番初めに9iPlatinumを受けるときは、DataGuardの経験が皆無でした。毎日業務後に3時間ほど、使える土日はフルで使って、3か月は繰り返し操作を行いました。何度DataGuardを作って壊したかわかりません。
もう1つの考え方として各操作がどのようなスピードで行えるようになっておくかが、いいかもしれません。そこで、目指すべき操作スピードを次に紹介します。
得意不得意は人によって異なるのは当然です。私はRACやData Guard分野を得意としています。
Data Guardについては、非DataGuardのシンプルな1つのデータベースがある状態から30分程度でDataGuardを構築できるように準備しました。CloudControlを使ったり、マニュアルを見ながらコマンドで実施したりいずれも行いました。業務で使用するためのDataGuardであれば設計も構築もしっかり考えて行う必要がありますが、テスト環境であればこのぐらいも目指せます。早い方かとは思いますが、一度目指してみてください。何度も繰り返していれば設定する上でのポイントや、どのマニュアルのどこを見れば設定できるか、身体が覚えてきます。
またシンプルなデータベース管理操作はどうでしょうか。例えば試験範囲にあるように表領域の作成や、制御ファイルの構成、などです。プラガブルデータベースの作成や、ユーザ設定も試験範囲にあります。個人的にはコマンド(SQL)で行った方が早いため、コマンドで行えるようにしました。SQLのオプションも色々あるため、それらも含めてマニュアルを確認していきました。基本的には〇〇を作成するという操作はマニュアルを見ずとも行えるようにしました。予想外のオプションが必要な試験問題もありましたので、それらはマニュアルで確認して回答を進めました。試験範囲はあくまで概要のため、そこから問題を想像するのは困難です。やはり試験範囲に記載の操作は出来るようになっておいて、想像外の問題に時間を使うようにしておくのが良いかと思います。
とにかく環境を作成したら、試験範囲を見ながら試験問題を想像し、コマンドや管理画面から行えるようにしていきます。
試験時間は2日間です。この間にRAC環境やData Guard環境を作成する必要があります。作成をどの工程から行うかにもよりますが、たった2日でこれらの環境を作成するということは、操作のスピードが求められるということが想像できるのではないでしょうか。2日でRACやData Guardです。試験範囲の操作はできるだけ何も見ずに行えることを目指しましょう。操作スピードがあがれば時間に余裕ができるため、気持ちにも余裕ができます。時間に余裕ができれば予想外の問題が出たとしても、調べる余裕ができます。試験範囲から内容が想像できるものはできるだけ何も見ずに行えるようになっておくことは非常に重要になります。
ORACLE MASTER Platinum DBA 2019はオラクルマスター最上位試験です。しかも、実技試験ということで、Goldまでと比べた難易度の差はかなりのものです。試験終了時には大きな疲労感があります。もう受けたくない!と思うかもしれません。しかし、それだけの達成感もあります。
机上の知識だけではなく、実技ができるということは、非常に大きなアドバンテージになります。ぜひそれを証明するための試験に挑戦し、資格取得を目指してみてください。