コラム

Oracle APEXでマイグレーション④~「AI」を活用した開発支援とその効果~

こんにちは。Verasym事業部の黒田です。
現在は「AIの時代」と呼ばれ、情報整理やデータ分析、マーケティング、問い合わせ対応、さらには技術サポートやシステム開発など、あらゆる分野でAIの活用が進んでいます。Oracle APEXも例外ではなく、「APEX AIアシスタント」機能が導入され、開発現場に大きな変革をもたらしています。

従来の開発プロセスでは、問題の原因調査、バックエンドの処理確認、ロジック設計などに多くの時間がかかっていました。これらの作業時間を短縮し、ミスの削減や精度の向上を図るために、AIの活用が有効であると判断しました。
支払請求システムのOracle APEXへの移行においては、AIのサポートにより新規のコーディングや課題解決の場面で開発効率の大幅な向上を実現しました。

今回の最終章では、自然言語処理と生成AIを統合したOracle APEXのAI機能が従来の開発工程をどのように変革させているのか実例と共にご紹介します。さらに、移行後に得られた具体的な成果と、今後の将来性についてもお伝えします。

▼Oracle APEXでマイグレーション 全4章
第1章:老朽化対応と刷新のポイント
第2章:レイアウト再現のコツ(スクロール付きレイアウト対応、複雑なレイアウト設計)
第3章:Excel帳票出力とLDAP認証を含むビジネスロジック移行のポイント

1)Oracle社が提供するOCI生成AIサービスとは?(OCI生成AI、OCI生成AIエージェント)

OCI生成AIサービスとは、Oracle社がOCI(Oracle Cloud Infrastructure)上で提供するエンタープライズ向けの包括的なAIサービスです。このサービスには主に「OCI生成AI(OCI Generative AI)」や「OCI生成AIエージェント(OCI Generative AI Agents)」が含まれます。これらを活用することで開発プロセスの効率化と自動化を実現します。

1-1)OCI生成AI(OCI Generative AI)とは?

OCI生成AIは、OCI(Oracle Cloud Infrastructure)上で提供される複数の大規模言語モデル(LLM)を活用したAI基盤のサービスです。自然言語処理に関する高度な機能をAPI経由で簡単に利用できます。回答はプレーンテキストだけでなく、箇条書きや番号付きリストなどユーザーが指定した形式で返すことが可能です。

OCI生成AIの主なユースケース
文章生成や要約:マーケティングコンテンツ、ブログ記事、商品説明の自動作成
質問応答:FAQ対応や簡易チャット機能の実装
翻訳:多言語対応のための自動翻訳
アプリ機能追加:WebサービスやモバイルアプリにAI機能を組み込み

1-2)OCI生成AIエージェント(OCI Generative AI Agents)とは?

OCI生成AIエージェントは、OCI生成AIを基盤に、対話型のインテリジェントエージェントを構築できるフルマネージドサービスです。単なる文章生成にとどまらず、RAGによる自社ナレッジ参照、SQL実行、外部API連携などを組み合わせ、複雑なタスクやフローを自動で実行します。

OCI生成エージェントの主なユースケース
カスタマーサポート:顧客対応を自動化し、24時間対応可能なチャットエージェント
社内ヘルプデスク:社員のITサポートや業務手順を効率化
ナレッジ活用:RAGで社内マニュアルやFAQを参照し、正確な回答を提供
複雑なワークフロー対応:注文処理、在庫確認、レポート作成などの一連の業務を自動化

1-3)OCI生成AIサービスの強み

①統合性
OCI生成AIサービスは、Oracle製品との強力な統合性が最大の特徴です。OracleデータベースやFusion Apps(Oracle社が提供するSaaS)とシームレスに連携できるため、既存の業務システムにAIを簡単に組み込めます。この仕組みにより、企業が持つ大量のデータを活用して、必要な情報を正確に探し出し、AIの回答に反映できます。他のクラウドサービスに比べて高速で精度の高い結果を出力できる点がOCIならではの強みと言えます。

②高度なセキュリティ
企業のガバナンス要件に対応した高度なセキュリティを備えています。顧客データはモデルの再学習に利用されず、すべてプライベートな環境で処理することが可能なため、情報漏洩のリスクを最小化できます。
さらに、ガードレール機能により、生成結果の安全性を確保しています。これにより、生成結果として不適切な内容の生成を防ぐことができます。

※ガードレール機能とは?
AIの想定外な動作やリスクを防ぐための仕組みや制御手段のこと

③スケーラビリティ
OCIのクラウド基盤を使えば、必要なときに大規模なAIモデルをすぐ利用できます。利用量に応じて処理に必要なコンピュータ資源を自動で調整できるため、試験的なPoC開発から本格的な運用まで柔軟に対応可能です。高性能な仕組みにより、大量のリクエストにもスムーズに対応でき、企業の成長に合わせて性能を確保できます。さらに、CohereやLLaMAなど複数のAIモデルから目的に合ったものを利用できます。

※「Cohere」「LLaMA」とは?
・Cohere:企業向けに自然言語処理機能(文章生成・検索・分類など)を提供するAIプラットフォーム
・LLaMA:Meta社が開発した大規模言語モデルで、幅広い用途で利用されるオープンソースのモデル群

2)Oracle APEXで活用するOCI生成AIサービスとは?

今回の対象ツールであるOracle APEXでは、OCI生成AI(OCI Generative AI)として提供されている「APEX AI アシスタント機能」を活用して開発を効率的に進めることができました。

2-1)APEX AI アシスタント機能の概要

APEX AIアシスタント機能は、開発を手助けする「会話型のガイド」です。この機能を活用すると、開発者は難しいプログラムや設定を意識することなく、自然言語(日本語や英語など)による質問や指示で開発を進められます。
また、複数のAIサービスと連携しており、必要な処理や機能を自動的に組み込んでくれるため、直感的な操作のみで高度なアプリを構築できます。

この機能は、Oracle APEXの開発画面やアプリケーション内で利用でき、開発者が「やりたいこと」を文章で入力すると、AIが最適な提案やコードを生成します。例えば、SQLの生成、デバック、データの要約など、これまで時間を要していた構築作業を短時間で完了できます。

APEX AI アシスタント機能の特徴
・Oracle APEXに特化した回答が可能
・選択した該当部分の改善案を提示
・自然言語によるUI設定や追加機能の開発サポート
・エラー箇所の検出と同時に修正案を即時生成

2-2)利用可能なAIプロバイダーと接続方法

APEX AIアシスタントは、複数のAIプロバイダーと連携するハイブリッド式のアーキテクチャを採用しています。複数のプロバイダーを組み合わせることで、精度・性能・コストのバランスを最適化し、将来的な技術進化にも対応可能な拡張性を確保しています。

利用可能なAIプロバイダーは以下の通りです。
OCI生成AIサービス:OCIに統合された高セキュリティなモデルかつ複数のAIモデルを提供
Open AI:GPTシリーズを提供しており、APIキーを使ってChatGPTなどの高度な言語モデルを利用可能
Cohere:自然言語処理が強みであり文章生成や要約に最適

これにより開発者は、異なる用途(プロジェクトや要件)に応じて最適なモデルを選択できます。
今回は、1つのサービスの中で、複数のAIモデルを含む「OCI生成AIサービス」を活用することにしました。


OCI生成AIサービスへの接続方法

AIプロバイダーの設定は「OCIのユーザーの接続情報」と「生成AIへの接続情報」と「モデル」のみでOK!

①APEX AI アシスタントを設定したいワークスペースのアプリケーション・ビルダーにアクセスしワークスペース・ユーティリティを押下


②生成AIを押下


③AIプロバイダを選択(今回はOCI生成サービスを使用)


④名前を設定(任意の名前を設定)


⑤生成AIへの接続先として使用するコンパートメントのOCIDを設定
※OCIにおけるコンパートメントとは?
関連リソースの集合であり、管理者から許可された特定のグループのみがアクセス可能なグループのこと仕切りのようなもの


⑥生成AIへの接続先のリージョンを設定
※OCIにおけるリージョンとは?
物理的に存在するデータ・センターがある場所、ここで設定するのはリージョン識別子という一意にリージョンを識別するためのもの


⑦使用する生成AIのモデルを設定


⑧アプリケーション・ビルダーで使用するトグルボタンをONに設定
(これによりAPEX AI アシスタントとして利用可能になる)
※ベースURLはリージョン設定時に自動で変更されるので触らない


⑨資格証明は新規作成のまま
今回はここで接続するOCIのIMAユーザーの接続情報を入力し資格証明として保存する


⑩生成AIに接続するOCIユーザーIDを設定
生成AIに接続するポリシーが付与されているIMAユーザーのOCIDを設定する。


⑪生成AIに接続するためのIMAユーザーのOCI秘密キー(鍵)を設定


⑫生成AIに接続するIMAユーザーが存在するOCIテナンシIDを設定
テナンシはOCIに契約しているアカウントとも捉えることができる、セキュアで分離されたパーティション。


⑬生成AIに接続するIMAユーザーのOCI公開キー・フィンガープリントを設定
生成AIに接続するIMAユーザーのOCI秘密キーに対応した公開キーのSHA-256ハッシュを16進数で区切ったもの

⑭作成を押下(これによりAPEX AI アシスタントが使用できる)

3)APEX AIアシスタント機能の活用事例と効果

支払請求システムの改修において、APEX AIアシスタントの活用により、コード生成や複雑な課題解決を迅速かつ効率的に行うことができました。以下では具体的なAPEX AIアシスタントの活用事例とその効果をご紹介します。

3-1)アプリケーション作成

作成したいアプリケーションの目的などを自然言語で指示するだけで簡単にアプリケーションのひな形を生成することができます。また使用データ(テーブル名)を指定するとそのデータを活用したページを作成することも可能です。

活用事例
・使用テーブルや作成ページの指示に基づいて「社員情報の管理アプリ」を生成

APEX AI アシスタントに入力した内容(プロンプト)は以下の通りです。
アプリケーションに使用する表:DEPT、EMP
ページは「社員マスタ管理(社員一覧画面)」を作成してください


※ここで使用してるテーブル(DEPT、EMP)は、Oracle APEXに標準で用意されてるデータになります。

AI機能の活用効果
・簡単なアプリであれば数分で大枠が作成可能
・新たなデザインや実装方法の提案が可能なため、創造性の向上につながる
・不要な機能や過剰な設計を避け、リソースを最適化とコストの削減

3-2)画面レイアウト

レイアウトの要件について入力された指示をもとに、適切なページレイアウトやコンポーネントを提案してくれます。またコンポーネント等に対する細かなカスタマイズも指定することができます。
新規作成からすでに出来上がっているコンポーネントへの追加修正などの提案も可能です。

活用事例
・複雑な表形式の入力フォーム作成

※下記レイアウトの完成形は、AIによるコードの生成と手作業によるカスタマイズを実施しています。

AI機能の活用効果
・短時間でHTML+CSS+PL/SQLの大枠コードを生成
・細かな部分の微調整のみで実装可能
・「ゼロから書く」負担を削減し、レビューや品質確認に集中

3-3)フロントエンド・バックエンドの処理

フロントエンドでは、動的なUIやイベント処理の提案、JavaScriptコードの生成できます。
バックエンドでは、テーブル等に基づいてSQLクエリの生成や簡単なPL/SQLコードの生成、ストアドプロシージャのひな形の生成などを提案が可能です。

活用事例
・JavaScriptによる複数項目の入力チェックを実装(フロントエンドの処理)
・PL/SQLによる領収書番号の自動採番を実装(バックエンドの処理)

※下記のキャプチャはバックエンドの処理

AI機能の活用効果
・機能に適したコードの生成により構文エラーやロジック不備を低減
・開発者のITスキルを補完
・クエリの可読性が向上し、後続のメンテナンスが容易化

3-4)エラーの解消

エラーメッセージや現象を入力すると、原因を解析し、修正コードや解決策を提示します。複雑なトラブルにも効率的にかつ簡単に解決することができます。

活用事例
・ORAエラー発生時にエラー該当箇所を自動解析し、修正コードや改善案を提示

APEX AI アシスタントが提案した内容は以下の通りです。
・エラー内容(ORA-20999,ORA-00936)に対する原因分析
・構文に誤りがあるSQLを正しい構文に修正した結果を生成
・修正だけではなく、SQL文の改善案(大文字小文字の揺らぎ)を提示

AI機能の活用効果
・エラー原因の特定や解決策の提示により、調査時間を大幅に短縮
・実装方法が不明な場合でも、特定の要件や指示をもとに実装方法の最適化

Oracle APEXのAIアシスタントは、SQLやHTML、JavaScriptのコード生成からAPI参照まで、開発工程全体を効率化する機能を備えています。しかし、高度なロジックの移行ではAIが解読できないケースもあるため、AIによる提案を起点として手動で改善や修正を加えることをお勧めします。

4)移行後に見えた成果と将来性

ここまでを通じて、Oracle APEXを軸にした移行プロセスをご紹介しました。こうした取り組みの結果、どのような成果が得られ、今後どのような可能性が広がっていくのかについてお伝えします。

4-1)移行後に得られた具体的な成果

今回のASP.NETからOracle APEXへの移行では、主に以下の3つの観点で大きな成果を得ることができました。

①開発効率と品質の向上
・既存コードの6割を流用により、開発工程の削減
・複雑な要件に対してもAIの活用により迅速に対応
・豊富な標準機能によって品質の安定化と保守性の向上

②業務の継続性と柔軟性の確保
・ナレッジの蓄積により、新規・追加要件にも迅速に対応可能
・標準機能と技術的カスタマイズの組み合わせにより、将来的な拡張性を確保

③コスト面の効果
・開発ライセンスが不要なため、従来のライセンス費用を大幅に削減
・クラウドシフトによりOCIの従量課金モデルを採用し、月額費用を抑制
・誰でも参加可能な開発環境により、人的リソースの有効活用し、保守運用コストを最適化

4-2)移行で得られた学びと課題

今回のプロジェクトを通して、私たちは多くの学びを得ました。
まず、プロジェクト成功の大きな要因となったのは、Oracle APEXの強みであるローコード開発と標準機能の豊富さ、柔軟性です。これにより開発作業を簡単かつ効率的に進めることができました。また、AIによる支援や開発担当者とサポートメンバーのチーム連携がスムーズな移行を実現する大きな力となりました。

一方で、想定外の課題もありました。特に現行システム特有の複雑なビジネスロジックは、Oracle APEXの標準機能だけでは完全に対応できず、Oracle APEX向けに現行のソースコードを修正する必要がありました

こうした経験から今後の改善ポイントも見えてきました。
ローコード開発は進化が速く、常に新しい機能やベストプラクティスが登場しています。今回のプロジェクトでも、発生した課題に対して機能を理解し、適切なカスタマイズを行うことで解決につながりました。こうした変化に対応するには、「継続的な学習と知識のアップデート」が重要であることを改めて実感しました。

今後は、最新技術のキャッチアップを積極的に行い、社内での情報共有を強化することで、より高度な提案とサポートを提供できる体制を整えていきます。

4-3)Verasymの役割と展望

システム移行の成功はゴールではなく、新しいスタートです。
ここでは、今回の取り組みを踏まえ、Verasymが今後どのような方向性を描いているのかをご紹介します。

Verasymが目指す未来
・既存システムの最適化と追加機能の開発
・様々なローコードツールの技術力強化
・内製化に向けた伴走型の技術支援

Verasymは、変化の速いIT環境に対応しながら、お客様と共に成長し続けるパートナーでありたいと考えています。ローコード開発の可能性を最大限に活かし、DXを加速させるための挑戦を続けていきます。

最後に

本連載では、Oracle APEXを活用した社内システム(支払請求システム)の再構築事例を通じて、様々な成果をご紹介いたしました。さらにAI機能(APEX AI アシスタント機能)の活用によるコード生成や課題解決のサポートは、単なる開発効率の向上にとどまらず、品質の安定化や社内ナレッジの定着、コスト削減などにもつながることがわかりました。
今回の取り組みで得た知見は、今後のシステム開発においても大きな可能性を秘めています。ローコードツールによる開発は企業ITの新たなスタンダードとなり、より柔軟で迅速な開発を実現するきっかけとなるでしょう。
Oracle APEXの導入を検討されている方にとって、本連載が一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。

今回の実証に関する詳細や、具体的な操作方法についてはお気軽にお問い合わせください。お待ちしております。

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