コラム
西尾孝之(Takayuki Nishio)
データベース操作と言えば、SQLを書いてクエリを実行するのが常識でした。しかし、生成AIの進化により、「自然言語でデータを操作する」という未来が現実のものとなりつつあります。その中心にあるのが、Oracle Select AIとOpenAI(などのLLM)の連携です。
本記事では、OpenAIとOracle Select AIを組み合わせることで、どのようにして自然言語によるインタラクティブなデータ活用が実現できるのか、技術的観点から掘り下げます。
Oracle Select AI徹底解剖 全3章
⇒【第1章】Select AIで変わるデータ活用の未来
⇒【第2章】ノーコードで誰でも分析!Select AIで始める新時代の業務改革
■ Select AIの役割
Oracle Select AIは、自然言語をSQLに変換し、Oracle Databaseに対して実行可能な形に落とし込むミドルウェアのような存在です。
■ OpenAI(または他のLLM)の役割
OpenAIは、自然言語から目的を推定し、それに対応する構文的に正しいSQL文を生成する知能を持っています。Select AIは、こうしたLLMをAPI連携でバックエンドに活用しています。
■ 技術的構成図(概念)
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User (Natural Language Query)
↓
Oracle Select AI
↓ (LLM連携)
→ ChatGPT API: 自然言語→SQL生成
↓
→ Oracle Database: SQL実行
↓
← 結果を自然言語で返却
この構成により、「営業部門の2024年Q1の売上トップ10を教えて」などの自然言語での質問が、そのまま業務用SQLに変換され、即時にデータ取得が可能となります。
LLMは万能ではなく、文脈に依存する性質があります。そのため、Select AIとの連携時に以下のようなDatabase設定で情報を付加することが効果的です。
「使用可能なテーブル一覧」や「カラムの意味」を付与するために「COMMENT文」や「23ai新機能のドメイン」を使用します。
このように構造を明示することで、Select AIはより的確なSQLを生成できます。
自然言語で任意のクエリを受け付ける仕組みは、一歩間違えると過剰なアクセスや情報漏洩のリスクを伴います。
技術的に注意すべき点:
・ユーザーの「ロールベースアクセス制御(RBAC)」に応じたクエリ制限
・一定時間やCPU使用量を超えるクエリの制御(リソースガバナンス)
・ビューやWITH句を活用したクエリスコープの制限
これらを設計段階で埋め込むことで、安全かつ効果的な運用が可能になります。
社内チャット(Slack、Teams)にデータアシスタントBotを組み込むことでより身近に使用できます。
例:
「今週の新規顧客数は?」
「月次レポートの粗利率をグラフで見せて」
→ これらの問いに対し、Select AIがSQLを生成し、結果を可視化して即時返答。
この様な仕組みを構築すれば、非エンジニア層でもSQLを意識せず業務データを活用できるようになります。
ユースケース技術的アプローチ効果営業レポートの自動取得チャットBot+Select AI分析スピード向上、属人化排除BIツールの自然言語検索機能Oracle Analytics Cloud連携クエリ作成のノーコード化カスタマーサポート用FAQ BotFAQ + データベース参照Bot顧客対応の精度と即応性向上
制約:
・日本語入力の自然言語サポートは精度に課題(英語優先設計)
・複雑なビジネスロジック(例:四半期ごとの変則集計など)の変換は不安定
・LLM要因による出力の揺れ(再現性確保が課題)
今後の展望:
・Select AIの日本語対応強化
・ユーザーごとの履歴・文脈学習によるパーソナライズ
この仕組みの中でエンジニアに求められるのは、もはやSQLを「書くこと」ではありません。
今後求められるのは:
●データスキーマの最適設計
●プロンプトエンジニアリングによる応答品質の担保
●AIと人の橋渡しとなるUI・UXの構築
●セキュリティとガバナンスの内製化
つまり、「自然言語×データベース」を設計し、支えるアーキテクト的立場へと役割が進化していきます。
「データにアクセスするにはSQLが必要」という常識は、Select AIによって確実に変わり始めています。技術者は、もはやクエリの書き手ではなく、データアクセスの体験を設計する側に立つ時代です。
自然言語での操作は一見シンプルですが、その背後には高度な設計と理解が求められます。その中心に立てるかどうかが、これからのエンジニアの価値を決める鍵になるでしょう。
西尾孝之(Takayuki Nishio)
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