コラム

Oracle Select AI徹底解剖
【第1章】Select AIで変わるデータ活用の未来

西尾孝之(Takayuki Nishio)


次世代データ活用の最前線 ― Oracle Select AIの衝撃
「SQLを書ける人だけがデータを活用できる時代は、もう終わりました。」
私が注目するのが、Oracleが満を持して提供する次世代データアクセス技術 Oracle Select AI です。

本ブログでは、3つの章立てでSelect AIの真価に迫ります。
【第1章】では、SQLを知らずともデータベースからインサイトを得る可能性を紹介し、【第2章】ではノーコードで誰でも始められるデータ分析の新たな扉を開きます。そして【第3章】では、OpenAIとの連携で“話すだけ”でデータベースを操作できる、まさに未来の業務スタイルを探ります。
AIと自然言語処理が融合することで、データ活用の民主化が現実のものとなった今。Select AIは、単なる技術革新にとどまらず、業務の常識すら変えようとしています。本記事では、Select AIの概要から実践活用、さらにOpenAIとの連携まで、段階的に理解を深めていただけます。

Oracle Select AI徹底解剖 全3章
⇒【第2章】ノーコードで誰でも分析!Select AIで始める新時代の業務改革
⇒【第3章】 OpenAI×Oracle Select AI連携:自然言語からデータベースを自在に操る

【第1章】 Select AIで変わるデータ活用の未来

データベースの世界では、「SQLが書けること」は長らくデータ操作や分析・運用の前提条件とされてきました。またデータ分析用のツールを使用する場合は、操作を覚える必要がありました。しかし、クラウド技術と生成AIの進化がその常識を覆しつつあります。Oracleが提供する 「Select AI」 は、その最前線に立つ機能です。本記事では、Select AIの仕組みと技術的特徴、活用のユースケース、そしてエンジニア視点での可能性と課題について詳しく解説します。

1. Select AIとは? – 自然言語でデータを引き出す新機軸

Select AIは、Oracle Databaseに統合された自然言語インターフェースで、SQLを知らないユーザーでも自然言語(英語でも日本語でも)で質問を投げると、内部で自動的にSQLに変換して結果を返してくれる機能です。
これを実現するために、Select AIは以下のコンポーネントを活用しています:
Oracle Databaseのメタデータ(スキーマ情報、リレーション、データ型など)
LLM(大規模言語モデル)との統合(例:OpenAIなど外部APIとの連携)
自然言語からSQLへのマッピングロジック

このアプローチにより、たとえば以下のような自然言語クエリが実行可能になります
| “2024年にたくさん売った顧客トップ10は?”
背後では自動的に、SELECT customer_name, SUM(sales_amount) FROM orders WHERE year=2024 GROUP BY customer_name ORDER BY SUM(sales_amount) DESC FETCH FIRST 10 ROWS ONLY; のようなSQLが生成されます。

2. 技術者にとっての価値

Select AIは一見、非エンジニア向けのUI強化機能にも思えますが、実は技術者にとっても大きな武器になり得ます。その理由を3つの観点で掘り下げてみましょう。

プロトタイピングの高速化
開発初期段階で「ざっくり傾向を見たい」といったときに、複雑なSQLを書く必要なく自然言語で結果を得られるのは大きなアドバンテージです。インサイトの方向性をすばやく掴むための「探索的データ分析(EDA)」に最適です。

BIツールやアプリへの組み込み
Select AIの自然言語インターフェースは、Oracle APEXやOracle Analytics Cloudと連携させることで、ユーザー主導型のデータ探索環境を提供できます。技術者は、事前にSQLクエリを組むことなく、ユーザーからの自然言語リクエストを基に柔軟なUI/UXを設計できます。

データガバナンスとの両立
Select AIは、単に自由なクエリを許すわけではなく、Oracle Databaseのセキュリティポリシーやユーザー権限に従って動作します。これにより、自然言語という柔軟な入口と、堅牢なバックエンド制御という相反する要件の両立が可能になります。

3. 活用例:Select AIが活きるシナリオ

■ データ分析チームの効率向上
アナリストがSQLを学習しなくても、自身でデータ抽出・加工が可能に。エンジニアの支援コストを大幅に削減。

■ 営業/マーケ部門のセルフサービスBI
「今月の成約率は?」「地域別のトレンドは?」といった質問を自然言語で投げて即時に結果を取得。

■ チャットボットとの統合
社内向けのデータアシスタントBotにSelect AIを組み込めば、SlackやTeams上で簡易なデータ検索が実現可能。

4. 注意点と今後の展望

Select AIは画期的ですが、万能ではありません。以下のような点には注意が必要です
 ● 自然言語の曖昧さ:同じ表現でも意味が異なる場合、誤ったSQLが生成されるリスクがある
 ● 複雑なビジネスロジックの自動化には限界がある(事前にビューやプロシージャで補完の必要あり)

今後は、より高精度なLLMとの連携や、ユーザーごとの文脈理解(プロンプト履歴の活用など)による進化が見込まれています。

5. まとめ

Oracle Select AIは、SQLスキルの壁を取り払い、「誰もがデータにアクセスできる時代」を加速させるキー技術です。一方で、技術者にとっても、自然言語によるデータ活用を組織全体に展開する設計者・推進者としての新たな役割が求められています。「SQLだけじゃない」データ活用の未来。今こそ、その一歩を踏み出すタイミングかもしれません。

西尾孝之(Takayuki Nishio)

Oracle Select AI徹底解剖 全3章
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