コラム

コールセンターの現場では、オペレーターの対応時間を1分1秒でも短くし、効率化していくことが求められます。しかし、必要に迫られて進めた改善は効果が一時的で、根本的な改善に結びついていません。導入した手法が、かえってオペレーターの効率を下げることもあります。
一方で、原因をしっかり特定し、目に見える成果につなげている例もあります。
本記事では、コールセンターの効率化を成功させるために重要となる以下のポイントを解説します。
・コールセンターの対応フェーズごとの課題
・業務を効率化するための具体的な手法
・効率化で失敗しないための注意点
さらに、最終的に目指すべき「本質的な効率化」についても理解が深まる内容です。記事を参考に、自社の課題を見極め、適切な改善策を検討してください。
キューサイ株式会社
コールセンター業務の効率化とは、単に処理時間を短くすることではありません。大切なのは「現場がスムーズに回り、オペレーターにとって働きやすい仕組みをつくること」です。現場に目を向けることで、結果として、コールセンター全体の効率化やコスト削減に結びつきます。
具体的なKPIとしては、以下の指標がよく使われます。
・AHT(平均処理時間)の短縮
・応答率の向上
・自己解決率の向上
特にAHTは、数値での変化がわかりやすくKPIに設定しやすい指標です。
コールセンター業務には大きく3つの対応フェーズがあります。
・対応前
・対応中
・対応後
効率化を阻む要因は、この各フェーズにそれぞれ潜んでいます。まずは、自社がどこに問題を抱えているのか「点」で見きわめることが大切です。

特定の時間帯やキャンペーン時などに入電が集中すると、応答率が下がります。電話がつながらないことで生まれる「機会損失」は無視できない課題です。
さらに、顧客が待たされるストレスから、通話開始直後のクレームを招きます。結果、1件あたりの対応時間が伸びてしまい、悪循環につながります。
対応中の大きな課題のひとつが、検索による時間のロスです。
ナレッジが分散していたり、CRMとの連携が不十分だったりすると、「資料の場所がわからない」「顧客の特定に手間取る」といった問題が起こります。1回あたりのロスが5〜10秒でも、積み重なると膨大な時間になります。
入力ルールの複雑さやシステムの操作性は、「ACW(事後処理)」の負荷を大きくします。特に、複数のシステムに同じ内容を入力する「二重入力」は、作業効率を大きく下げる原因になります。
パソコン操作に慣れていなければ、応答中より時間がかかるかもしれません。
コールセンター業務にシステムは欠かせません。しかし、導入したシステムが現場の実態に合わなければ、業務品質や効率が下がってしまいます。その結果、Excelや紙のメモを併用するケースも少なくありません。
このような「システムの形骸化」は、効率化の妨げになるだけでなく、データ活用の面でも大きなマイナスになります。
コールセンター業務を効率化することで、コスト面はもちろん、現場のオペレーターや顧客にも大きな効果をもたらします。
具体的なメリットは、次のとおりです。
効率化の大きなメリットのひとつが、リソース最適化により実現できるコスト削減です。
1件あたりの応対時間が短くなると、同じ人数でも処理できる件数が大きく増えます。つまり、少人数で多くの問い合わせに応対できるということです。
その結果、人員の固定費を抑えながら、放棄呼(つながらない電話)を減らし、機会損失を防げます。
コールセンターにおける離職率の高さは、運営する企業にとって大きな課題です。離職が増えると教育が追いつかず、結果としてオペレーター個人に負担が集中します。
・精神的な負担
・肉体的な負担
これらが離職につながる主な要因です。
精神面の負担は仕組みだけでは解決しにくいものです。しかし、肉体的な負担は、運用や仕組みの見直しで軽減できます。
属人化は、コールセンターにとって大きなリスクです。ひとりが離職するだけで、業務全体の効率が下がってしまうケースもあります。
一方で、仕組みによる効率化ができれば、再現性のある業務が実現できます。新人オペレーターにかかる教育コストを抑えられるうえに、早い段階から戦力として活躍してもらえる点もメリットです。
>>コールセンターの後処理時間を50%減!販売管理システムの要件に合う受電システムをスクラッチ開発した事例
繰り返しになりますが、効率化は仕組みづくりによって実現します。再現性のある仕組みを整えれば、オペレーターのスキルに左右されず、誰でも一定以上の品質で応対が可能です。
効率的でムダのない応対は顧客満足にもつながり、良い循環を生み出します。
コールセンターで効率化を検討する際は、次の3つの基準で判断すると効果的です。
・取り組みやすさ:実装の容易さや現場への適合しやすさ
・投資対効果(ROI):コストとリターンの大きさ、影響範囲の広さ
・持続可能性:長期的に運用・改善し続けられるか、その場しのぎでないか
原則として、コストが低く取り組みやすい手法ほど、全体への影響は小さくなりがちです。そのため、自社が抱える課題の大きさや施策の影響範囲をしっかりと見きわめたうえで、実行する必要があります。
ここでは、コールセンターの効率化に役立つ10の手法を紹介します。

入電制限の目的は、ムダな問い合わせを減らすことです。
たとえば、すべての電話が総合窓口に集中すると、内線の確認や対応部署の選定だけで数分のロスが発生してしまいます。
・FAQの整備:お客様が自分で解決できる仕組みをつくり、対応すべき内容を絞り込む
・IVR(自動音声応答)の階層最適化:最低限の内容を把握でき、一次対応での解決率が上がりやすくなる
これらの改善策により、対応が必要なお問い合わせを選別しつつ、対応時間の短縮も期待できます。
対応中のタイムロスをおさえるには、標準化が有効です。
・トークスクリプトの整備:想定される質問に対して、定型の回答をすぐに提示できる
・ナレッジの整備:フォルダ構造や操作性を見直し、必要な情報を見つけやすい環境をつくる
コールセンターでは、情報検索に多くの時間が使われています。そのほとんどは、システムの使いにくさや保管場所の整理不足が原因です。
すぐに回答へたどり着ける仕組みが整えば、全オペレーターの通話時間を大きく減らせます。
コールセンターの中心となるのはオペレーターです。そのため、オペレーターの配置や教育体制の見直しには、大きな改善の余地があります。
・配置の見直し:問い合わせが集中する日程や部署に、人員を優先的に配置する
・教育体制の見直し:研修やOJTを強化することで、オペレーターの質を高める
適材適所で人員を配置できれば、取りこぼしやムダな応対を減らせます。日常的に細やかな改善を続けられる点もメリットです。
音声認識ツールを使えば、AIが通話内容を自動でテキスト化してくれます。リアルタイムでのテキスト化も可能なため、通話記録などの手入力はほぼ必要ありません。
・音声認識:通話内容を自動でテキスト化して入力量を減らす
・生成AI:通話履歴から内容を要約、検索効率アップも期待できる
たとえば、PC操作やタイピングが苦手なオペレーターでも、安定した素早い入力ができます。
ただし、情報セキュリティに沿ったガイドラインを整えなくてはいけません。
システム改善は、効率化に大きな影響を与える施策です。システムは業務の土台になりますが、一方で、多くの企業が運用面の課題を抱えてしまいます。
・CRM標準化:顧客情報をシステムに集約することで、検索しやすくなり、データ活用の基盤にもなる
・システム導入・見直し:操作性や業務フローを整理し、全体の改善につなげる
システムは、管理や入力を楽にするだけでなく、業務の標準化にも役立ちます。データの保管場所や入力の流れをシステム上で統一できるためです。
さらに、保管方法を統一すればデータ活用がしやすくなり、データドリブンな改善にもつながります。
コールセンター業務の効率化を成功させるには、次の3つのポイントを意識する必要があります。
効率化を意識しすぎると、顧客の体験が置き去りになってしまうことがあります。CXを犠牲にして進めた効率化は一時的な成果しか得られず、根本的な改善にはつながりません。
たとえば、入電数を減らすためにIVR(自動音声応答)の階層を複雑にしすぎると、顧客の負担が増え、満足度を大きく下げてしまいます。
効率を求める際は、「顧客にもメリットがあるか」をあわせて検討してください。
「入力画面だけを使いやすくする」といった部分的な改善は、全体の流れを損なうリスクがあります。そのため、改善策の影響範囲をあらかじめ想定し、全体がスムーズに進むかという確認も必要です。
ただし「変更=悪」と考えるのは大きな誤解です。改善を続けなければ、現状維持すら難しくなります。
「AHTの短縮や入力時間の削減によって、リソースやコストを削減すること」が効率化の目的です。改善策の実行は、手段であり目的ではありません。
【ツール導入の例】
・課題:複数箇所へのデータ入力が業務の30%ほどを占めている
・改善策:データ連携ツールを導入して基盤を構築
・目的:データ入力箇所を一点にまとめ、重複入力によるムダなリソースを削減する
上記の例では、データ入力規則の標準化やデータ基盤の設計が目的達成のために必要な業務になります。「改善策を実行して満足」しないように注意が必要です。
ここでは、弊社が実際に取り組んだコールセンターの効率化事例を紹介します。
抱えていた課題
・電話1件あたりの平均処理時間が10分以上と長い
・コールセンター業務の外注費が増えていた
・販売管理システムをコールセンターにも展開しており操作が複雑
実施した支援内容
コールセンターに展開していた販売管理システムをもとに、独立した受電フロントシステムを構築。豊富な機能や細かな業務フローに最適化するため、スクラッチ開発(オーダーメイド)を採用しました。
得られた効果
・後処理にかかる時間を50%短縮。
・レコメンド機能によりクロスセルを強化。
後処理時間は5分から2分30秒へ短縮され、現場のオペレーターからも高い評価を得られました。
>>コールセンターの後処理時間を50%減!販売管理システムの要件に合う受電システムをスクラッチ開発した事例
コールセンターは定型業務が多い職種です。そのため、システム化(仕組み化)しないこと自体が長期的な損失となります。特に、入電規模が大きいほど定型業務の短縮による効果を得やすく、一回数秒の入力短縮でさえ膨大なコスト削減に直結します。
・繰り返される定型業務があるか
・その業務が今後も継続し、拡大する予定があるか
どちらも当てはまる場合は、システム開発による大幅な改善が期待できます。
中でも、スクラッチ開発はもっとも抜本的に改善できる手段のひとつです。
パッケージツールとは、特定の業務に必要な機能をあらかじめ詰め込んだ「汎用ソフト」です。経理・人事など、世の中の標準的なルールに従えばよい業務で大きな効果を発揮します。
しかし、コールセンターの業務フローは、扱う商材や顧客層、二次対応(エスカレーション)のルールによって様々です。そのため、自社の業務フローを補完できず、システム側に業務を合わせる「妥協運用」になるケースもあります。
一方、スクラッチ開発は「業務を起点に」システムを構築するオーダーメイドの手法です。パッケージツールの制約に左右されず、自社の業務フローに最適化したシステムを開発できます。
システム面の改善で最大の障壁となるのが既存システムの処理です。企業の資産でもある基幹システムやCRMは、簡単には切り離せません。特に、膨大な顧客データを複数の部門や用途で活用するコールセンターでは、データの整合性がより重要度を増します。
スクラッチ開発のメリットは、既存システムとの独自連携を構築できることです。既存システムから必要な情報抜き出し、ひとつの画面に集約することも可能です。
以上のメリットから、既存システムの活用を前提とした開発で、多くの企業様に選ばれています。
「スクラッチ開発は時間とコストがかかる」という印象をお持ちかもしれませんが、実際の状況は異なります。スモールスタートで一部機能を開発し、効果を見ながら段階的に拡張するという事例も少なくありません。
スクラッチ開発の場合、設計段階から拡張を前提としたロードマップを描けます。つまり、拡張の自由度が高く、今必要な機能だけを好きなタイミングで開発できるということです。
独自の業務やフローがあるコールセンターでは、継続的なメリットをもたらします。
コールセンター業務を効率化するには、仕組み化が欠かせません。オペレーターに依存した運用では属人化が進み、根本的な改善につながりにくくなります。
特に、入れ替わりが激しいコールセンター業界では、再現性のある仕組みを整えることが、安定した効率運用のカギになります。
記事内で紹介した手法を参考にしながら、業務全体によい影響を与える改善を検討してみてください。