岩手県を中心に、地域密着型のシステムインテグレーション事業を手掛ける株式会社システムベースは、2019年にシステム設計ツール「Verasym System Designer」を導入。新規システム開発プロジェクトから利用を開始した結果、設計仕様書作成・修正の効率化が実現した。また、システム改修案件でも既存のExcel仕様書から移行を進め、属人化の排除などの効果も期待している。
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導入前の課題
- ・設計仕様書をExcelで作成しており、修正の際などに多大な手間がかかっていた。
- ・基本設計書と詳細設計書の両方に関係する修正に漏れが発生していた。
- ・作成する担当者によって体裁が微妙に違うなど、属人化の懸念があった。
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導入後の効果
- ・既存の設計作業に近い感覚で操作できるため学習コストが低く、初めてツールを使う担当者でも効率的に作業を行えるようになった。
- ・基本設計書と詳細設計書を1つのドキュメントで管理できるようになったため、修正漏れが発生しなくなった。
- ・あらかじめフォーマットが準備されているため、業務内容だけに集中でき、属人化の排除にもつながると期待している。
40年以上の歴史を持つ地域密着型システムインテグレーター
1973年に計算センターとして設立されて以来、地域密着型の事業を展開しているシステムベース。現在では自社でデータセンターを運営し、幅広いプロジェクトに対応できるシステムインテグレーターとなっている。
「当社では、岩手県を中心に各拠点の地場に集中して営業活動を行っています。設立46期という歴史は、地域に密着してシステム受託開発を手掛ける会社としては、他にはほとんどありません。顧客の業種としては、公共や文教、医療から製造、建築、流通、小売など多種多様です」と、参与 ソリューション1部長の折笠英輝氏は説明する。
多彩な顧客のニーズに応える形で、数々のシステムを開発してきた同社では近年、システムの設計開発プロセスに課題を感じていた。
「設計仕様書は、これまで長らくExcelで作成してきました。Excelは汎用性が高いとはいえ、やはり表計算のためのツールなので、システム設計書に最適とは言えません。例えば、しばしば大量の画面イメージを貼り込むため動作が重くなってしまい、ときにはデータが壊れてしまうこともありました。また、同じプロジェクトでも、顧客と共有する基本設計書と社内で使う詳細設計書を別々に管理していたので、修正を加える際には両方のファイルで別々に編集しなければなりません。修正がたくさんあると、手間がかかるだけでなく修正漏れの可能性も出てきます」と、ソリューション1部 1グループ マネージャーの吉田幸市氏は説明する。
現場からの要望で全社的な導入を検討、VSSDの採用を決定
このシステム設計書の課題を改善すべく、現場の従業員たちは専用ツールの導入を上層部に要望していた。システムベースでは全社的な導入に向けてシステム設計ツール製品の比較検討を行い、最終的に第一コンピュータリソース(以下、DCR)の「Verasym System Designer(以下、VSSD)」を採用した。
「高機能だが高額など設計・開発ツールは数多くあります。その中でVSSDは、当社で使っている書類の体裁と大差ないアウトプットを出せることや、学習コストを低く抑えられそうだという感触があり、総合的に高く評価して選定しました」と、折笠氏は選定理由を語る。
一方で吉田氏も「VSSDの操作感は我々が使っているVisualStudioに近い感覚で、使いやすいと感じました。また、DCRは本社がある北上市までスタッフを派遣し、説明してくれたこともあり、さまざまな点で評価できますね」と、VSSDの選定を歓迎している。
そしてシステムベースは2019年2月にVSSDを導入し、4月から本格的な利用を開始した。
操作に習熟しながらでも設計業務の効率向上を実感
現在VSSDを利用しているのは、同社の開発者40名あまり。うちシステム設計書の作成を担うのが、吉田氏が所属するソリューション1部 1グループ25名だ。まずは、新規システム開発プロジェクトからVSSDを使い始めており、1年足らずの間に16件ほど使ってきたという。VSSDを活用して得られた感触について、吉田氏は以下のように語る。
「まず目指したのは、設計業務の効率化です。使い始めた当初は習熟しながらの利用でもあったので作業に時間を要することもありましたが、振り返ってみると5%くらいは効率化できたかと思います。変更時に影響範囲を把握できる点なども、この効率化に寄与していますね。これからVSSDを使い慣れていくにつれ、さらに作業効率が高まることでしょう」
さらに吉田氏は「VSSDではきちんとしたデータベースで情報を管理しているので、ファイルが壊れる心配もありません。Excelでは信頼できなかった排他制御もVSSDなら確実に機能しますし、修正履歴も管理されているので、複数人での作業も安心です」と語った。
VSSD導入によって、Excelでシステム設計書を作成していた頃にはできなかったWebシステム開発の際の画面モックアップなどができるようになった。
「モックアップ作成機能により、具体的な画面イメージを顧客と一緒に見ながら打ち合わせできるようになりました。これは導入前から期待していたことですが、実際に期待通りの効果を感じます」と吉田氏は語る。
さらに、システム設計・開発のプロセスにも変化が見られるようになってきた。その代表例が、ドメイン定義だ。VSSDでは、データベーステーブルや帳票・画面、関数などの項目をあらかじめ定義した上で設計作業を進める流れになっており、それらの項目情報をドメイン定義と呼ぶ。
「VSSDは定義を決めずとも設計ができるツールですが、最初にきちんと定義を決めることで、よりしっかりした設計にすることができます。VSSDに慣れるまで違和感がありましたが、慣れてくると手戻りが減ってきました。その他の部分でも、仕事の進め方をVSSDの仕様に合わせるようになり、チームの共通ツールとして使うことで、設計のやり方も統一化されてきました」(吉田氏)
またSEだけでなく、設計書に沿って開発するプログラマーたちも、VSSDによる変化を感じているとのこと。開発1部 商品企画開発グループ マネージャーの伊藤秀悦氏は、以下のように語っている。
「Excelで設計書をつくる場合は、内容だけでなくレイアウトもいちいち調整しなければならなかったのが、VSSDを使うことで仕事の本質的な部分に集中できるようになりました。プログラマーとしては、プログラミング業務の中で設計書の間違いに気付いたとき、即座にVSSDで設計書の内容を修正し、いちいちSEに手間をかけさせることなく仕事を進めることも可能になりました」
追加開発プロジェクトにも活用を拡大、将来的には自動化も視野に
システムベースでは今後、VSSDの活用をさらに拡大し、導入効果を高めようとしている。その一つが既存システムの修正や追加開発のプロジェクトだ。折笠氏は次のように語る。
「システムはつくって終わりではありません。使っている間にユーザーから要望が出てきますし、その他の要因で修正や追加開発が必要になってきます。そういったニーズに対応するメンテナンスやサポートもまた、我々の重要な業務です。当社では40年もの関係がある顧客もありますから、当社側の担当者が入れ替わることも珍しくありません。担当者が代わっても安定した品質で対応できるようにするため、VSSDの修正履歴などの機能に期待しているのです」
とはいえ、VSSD導入以前につくられたシステムの修正・追加プロジェクトでVSSDを活用するためには、まず既存のExcel設計書をVSSDに移行する必要がある。吉田氏は、その点を懸念しつつも、VSSDの機能で移行も効率的に行えるのではないかと期待している。
「既存資産の取り込みは、今後の大きなハードルになるでしょう。とはいえ、テーブル定義情報を吸い出してVSSDに取り込むツールもありますから、比較的簡単に行えるかもしれないと考えています」
伊藤氏は、将来的にはツールの追加によるプログラミング業務の効率化も期待できると考えている。
「VSSDで管理している情報は、日本語とプログラム言語の中間に位置するような存在です。例えばXMLやJSONなどの形で出力してくれればなお良いとも思いますが、同じくDCRの『Verasym Application Generator』(以下、VSAG)によるコード自動生成も期待できそうだと考えています。メンバー全員がVSSDを使いこなせるようになったら、VSAGの導入も検討したいですね」とそれぞれがDCRへの期待と今後の展望を語ってくれた。