システムインテグレーターの株式会社スタイルズ(以下、スタイルズ)では、運用・保守を担っていたレガシーシステムの大規模改修に際して、システム設計ツール「Verasym System Designer」を採用。設計書管理の基盤が整ったことで、設計変更による影響を的確に把握できるようになり、改修プロジェクトを効率的に完遂することができた。また、メンテナンス性が向上したことで、高いクオリティの運用・保守サービスを、引き続き長期間にわたって提供していけるようになった。
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導入前の課題
- ・設計書が残っておらず、大規模改修や長期的な保守に不安があった。
- ・設計変更時の影響範囲特定を経験則に頼っていた。
- ・あいまいな設計によりコーディング担当者との不要なコミュニケーションや手間が生じていた。
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導入後の効果
- ・設計書を一元的に管理できるようになり、属人化を排除して常に最新状態で引き継げるようになった。
- ・ドメイン定義に紐付いて影響範囲を効率的に把握。精度も向上し品質担保に寄与した。
- ・設計書の記述内容が明確化することで、コーディング時の疑問がなくなり、開発プロセス全体の効率が向上した。
新規開発から保守・運用等まで、守備範囲の広いシステムインテグレーター
2003年に設立したスタイルズは、アプリケーション開発はもちろん、要件定義やインフラ構築、運用・保守まで一貫して手がけるシステムインテグレーターである。これまで企業や公共団体の数多くのプロジェクトを経験してきている。近年ではクラウド上でのシステム開発・運用・監視でも豊富な知見を蓄え、オープンソースも積極的に取り入れている。システムの着実な運用から、クラウドシフトによるデジタルトランスフォーメーションへのチャレンジまで、幅広いニーズに応えられるのが持ち味だ。
昨今では、運用技術者の不足などを背景に、メンテナンスが困難になったレガシーシステムも多数ある。そこで同社では、運用・保守で培ったケイパビリティをメニュー化し、「アプリケーション保守サービス」として提供している。
SIビジネスグループ 取締役 マネージャーの隂山元希氏は「設計書などのドキュメントが残っていない場合や、十分なナレッジの引き継ぎが困難なケースも珍しくありません。大きな改修が必要になると、慎重に対応する必要があります」と、保守運用の難しさを明かす。
今回「Verasym System Designer」(以下、VSSD)を活用したプロジェクトは、別のSIerが構築し運用・保守も手がけていたシステムを、15年ほど前にスタイルズが引き継いで運用・保守をしていた。
「今回、利用ユーザーが増えることになり、大規模改修が必要になりました。ところが設計書が残っていないので、C言語のソースコードを元に設計書を整備し、影響範囲の特定からスタートする必要がありました」と話すのは、リーダーとしてプロジェクトに携わったSIビジネスグループ リーダーの山口和伸氏だ。
長期的な保守性向上を視野に入れ、システム設計ツール「VSSD」を導入
そこでスタイルズでは、将来を見据えて設計書のフォーマットや管理手法などから、抜本的な検討を開始した。設計書は、Excelなどのスプレッドシートで記述され属人的に管理されるケースが少なくない。それを改め、VSSDで一元管理することにした。
「ルールを決めて管理していても、それには限界があります。『どこに正しいドキュメントがあるのか』『どれが最新のドキュメントなのか』がわからなくなってしまう懸念があります。設計書を確実に一元管理できる仕組みを整備することで、今後たとえ担当者が異動や退職で変わった場合でも、設計情報を継承しやすく、長期間にわたる保守ができることが大きなメリットだと感じました。数社のソリューションを比較しましたが、他のエンジニアの意見も聞いてVSSDの採用を決定しました」と山口氏は話す。
プロジェクトへの導入にあたっては、サポート資料のほか第一コンピュータリソースによる数回のハンズオンなどを通して、使用方法を習得した。
実際に設計を担当したSIビジネスグループ SI第4チームの遠藤圭氏は、「サンプルを参考に作っていったところ、すぐにある程度の使い方を把握できました」と振り返る。VSSDを利用するのが初めてということもあり、最初は戸惑うこともあったが、「DB設計書・画面フロー・画面定義・クラス定義・コード定義など様々な設計情報がVSSDで一元化でき、慣れればVSSDを使ったほうがスムーズに設計作業が進むと感じます」と続ける。
山口氏も、「第一コンピュータリソースに、途中で質問したり改善を要望したりしましたが、その場で解決できる内容には、すぐメールや電話で対応してもらい、滞りなくプロジェクトを進めることができました」と話す。
影響範囲の特定や、精度向上にVSSDのメリットを実感
今回のプロジェクトではVSSDでドメイン定義を行い、画面遷移図、共通関数やクラスの定義など、ドキュメント作成機能をほぼ全般的に利用した。
「まず、常に最新の状態が保たれているというのが、たいへん便利です。そして、ドメイン定義によってDB項目やオブジェクトの関連を見通すことができるため、、開発途中で設計の変更が発生した時に、改修箇所や影響範囲が特定でき、とても心強かったです。VSSDで効率的になっただけでなく、従来は経験則に頼っていたものが自動的にわかるようになったことで、精度向上につながったと思います」(遠藤氏)
さらに、設計書をすべての開発者間で共有できることで、コミュニケーションが正しく行えるようになり、実装するエンジニアからの問い合わせが少なくなったり、作業の手戻りなどが少なくなったのもメリットだという。
また、山口氏は「いまのところ設計書を作成する時間に関しては、大きな変化はないかもしれません。しかし、これはVSSDに限らない話でしょうし、今後使い慣れれば徐々に効率化されるかもしれません。それよりも、将来的に保守しやすい環境が整い、精度向上につながったことにメリットを感じます」と手応えを話す。
マイグレーションでの活用や命題である高品質の運用・保守に期待
多様なシステムの開発を手がけるスタイルズだが、今後どのような業務でVSSDを活用できそうかを伺った。
「社内には、運用・保守から引き継ぎ、『設計書がない』『陳腐化している』と困っているチームが他にもありますが、通常の対応をしながら設計書を作成するのは容易ではありません。第一コンピュータリソースにはソースコードを元に設計書を作成するオプションサービスもあるので、VSSDの価値とともに社内で情報共有するつもりです。新たな用途としては、クライアント/サーバーからWEBへマイグレーションしたいというニーズがあり、設計書がないなかで有効ではないかと考えています」(山口氏)
さらに隂山氏は、「厳密な設計書管理を必要とする、ウォーターフォール型で開発する業務システムにおいて特に力を発揮しやすいと評価しています。システムの品質を担保することが大命題ですから、高品質なサービスを効率的に提供するためにVSSDの活用を進めたいと考えています」と語ってくれた。