SIerの第一コンピュータリソースは、人事統合システム「ADPS」のバージョンアップ後、Excelアドインツール「NextCELL」の処理速度低下に悩まされていた。その解決のため、NextCELLから、自社製ツールの「CHITASU DATA UTILITY」に移行した。その結果、帳票作成時間が約35分から約3秒に短縮されたなど、大幅な処理速度向上を実現した。あわせて、データ二次加工の工数削減、処理フローの可視化、属人化解消など、さまざまな効果を得ている。
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導入前の課題
- ・NextCELLによる帳票作成などの処理速度が低下していた
- ・帳票がPDFでしか出力されず、データ再利用に二次加工が必要
- ・処理フローは作成者本人しか把握できず属人化していた
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導入後の効果
- ・CHITASUへの移行で、帳票作成時間を約35分から約3秒へと大幅に短縮
- ・データを再利用可能な形で出力し、二次加工の工数を削減
- ・処理フローの可視化で処理内容を視覚的に把握でき属人化を解消
NextCELLの処理速度低下などが課題
第一コンピュータリソース(以下、DCR)は、システム開発を中核に、ITインフラ・クラウドサービス、自社開発を含む製品・ツールによるソリューション、グローバルサービスの4分野で事業を展開する。独立系SIerである同社はメーカーや系列の枠にとらわれず、 製造業や、金融、公共など幅広い業界向けに最適なサービスを提供している。
同社は人事統合システムの「ADPS」を長年利用している。そして、人事・給与業務の現場では、ADPSのデータベースから目的のデータを抽出し、月次処理後のチェックや独自帳票の作成、社内外へ提出する元資料の作成などをExcelで行うために、Excelアドインツール 「NextCELL」を導入していた。NextCELLは人事・給与関連メニューの約3割を占めており、その他に個別作成のフォーマットも約100本あった。
2024年4月、ADPSを「PEP」から「AES」へバージョンアップした際、NextCELLの問題がいくつか顕在化した。最も深刻な問題は処理速度の大幅な低下である。
同社 総務部 総務課 課長 管野 貴哉 氏は、「例えば、月次処理の1つである給与支給と給与控除の帳票作成では、バージョンアップ前はともに約1分だった処理時間が、前者は約35分、後者は約30分に増えました」と振り返る。
月次処理におけるNextCELLの実行数は10ファイルあり、それに比例して時間を要する。もし、給与計算などでミスがあると、修正して再実行しなければならず、さらに処理時間が増える。
「当社は勤怠締めから、給与振り込みに必要なデータを揃えるまでに、3日間しか猶予がありません。社員の皆さんへ支給日に給与を確実に振り込むには、処理速度低下は大きな問題でした」(管野氏)
株式会社第一コンピュータリソース 総務部 総務課 課長 管野 貴哉 氏
しかも、新バージョンのNextCELLはクライアントPCに組み込まれる構成に変わった。「処理を走らせている最中は、他のアプリケーションが実質使えず、日常業務の流れが止まってしまいました」と同社 総務部 総務課 主任 堀場 彩日 氏は話す。
その上、ADPSの旧バージョンでは、帳票はExcel形式で出力できたが、新バージョンではすべてPDFで出力される。なおかつ、従来のNextCELLの帳票出力機能も使えなくなった。
「以前は抽出したデータをチェックや他システム連携などにそのまま用いられました。新バージョンではPDF形式でしか得られないので、データを利用するには二次加工が必要でした。単に帳票が作成できればよいのではなく、業務で再利用できる形でデータを出せるかが課題でした」(管野氏)
また、データ抽出後に、Excel側で条件調整や追加編集をしなければならなかったケースもしばしばあった。
NextCELLの作成・管理における属人化も、以前からの課題であった。「NextCELLは給与計算のロジックなどの処理フローが見づらく、どのテーブルを結合しているのかなど、構造は作った本人しか分かりませんでした」と管野氏は語る。
NextCELLからCHITASUへ移行
DCRはこれらの課題を解決するため、NextCELLから「CHITASU DATA UTILITY」(以下、CHITASU)への移行を決めた。CHITASUはデータ収集、加工(結合・抽出・集計)、分析、出力がワンストップで行えるDCR自社製のツールである。日本、タイやイタリア、サウジアラビア、中国で多くの企業に導入された実績を持つ。
CHITASUの特徴は、SQLやスクリプトが不要なノーコードツールであり、ExcelのようにGUIと関数だけで直感的に使える操作性である。データ結合・加工などはドラッグ&ドロップで視覚的に設定でき、処理フローの可視化も可能だ。CSVをはじめ多様なデータ形式をまとめて扱え、数億件もの大量のデータでも高速に抽出・分析できる。
DCRの今回の主な要件は、帳票や連携データを実務で使える形式で安定的に作成できることであった。
「CHITASUは『NextCELLの上位互換』というイメージの製品です。Excel形式の出力など、 機能面は私たちの要件をすべて満たしています。処理速度についても、事前に実環境でテストし、十分であることを確認しました」(管野氏)
2025年7月よりCHITASUの移行作業に取り掛かった。まずは給与と年末調整の範囲で導入した。その際、すべての帳票を一度に移行するのではなく、優先度の高いものを選定して先に移行した。「年末調整に間に合わせるため、関連する51の帳票を優先し、2025年12月に移行完了しました。残りの帳票の移行は、順次進めている最中です」(堀場氏)
株式会社第一コンピュータリソース 総務部 総務課 主任 堀場 彩日 氏
一方、移行では苦労した点もあった。ADPSは新旧バージョンでデータベースの定義や項目区分が異なっており、旧バージョン向けに作成されたNextCELLを基に、新バージョン向けのCHITASUを作成する際は、データベースの差異を都度確認して埋めていく作業に、少なくない手間を要した。他にも、3個以上のデータを一度に結合はできず、取り込みに工夫が必要であったという。
帳票作成時間の大幅な短縮を実現
DCRはCHITASUへの移行によって、ADPSバージョンアップ当初の各種課題を解決できた。処理速度について管野氏は次のように効果を述べる。
「処理時間は給与支給では約35分から約3秒、全給与情報では約30分から約3秒と大幅に短縮できました。たとえミスがあり、再実行してもすぐに終わります。おかげで、3日間という短い期間のなか、給与振り込みに必要なデータをより確実に余裕を持って揃えられるようになりました」(管野氏)
また、ADPSの旧バージョンと比べても、給与支給や給与控除は処理時間を従来の約1分から約3秒に短縮できている。
さらに高速化によって、「実行中でも他のアプリケーションを問題なく使用できます。今までの処理待ち時間がすべて業務の時間に変わり、生産性向上につながりました」(堀場氏)といった成果も挙げている。
データ出力については、PDFだけでなく、Excel形式など業務で再利用できる形でデータを出力できるようになった。それに 加えて、「従来はデータ抽出後にExcel側で行っていた条件調整や追加編集は、CHITASUでは条件指定の段階で吸収できます。二次加工の作業はほぼ不要となり、負担を大幅に減らせました」と管野氏は目を細める。
そして、処理フローの可視化によって、属人化の解消を大きく前進できた。「CHITASUは処理の流れや構造が視覚的に把握しやすく、処理内容の共有も容易なので、属人化の解消に直結します」と管野氏は話す。
システムCHITASUでの設定画面(フロー図簡易説明付き)
DCRは今回のCHITASU移行に伴い、これらの効果とともに、業務の見直し・棚卸を行ったことで、これまで見えなかった課題とその改善案の発見という付加価値も得られている。
今後は今回移行した帳票群の安定運用を継続しつつ、CHITASUを適用する業務範囲の拡大を進めていく。
「現在、帳票の標準となるテンプレート群を作成している最中です。並行してユーザーマニュアルも作成しています。CHITASUの利用体制を充実させることで、給与・年末調整だけでなく、人事系や他部門での帳票や元資料の作成などの業務に横展開を図ります」(堀場氏)
最後に管野氏は「私たち人事給与の現場では、限られた期間と人員の中で、振込日など納期を確実に厳守しなければなりません。その上で、効率化や品質向上、属人化解消も求められます。今回の移行で、CHITASUはこれらの課題解決に有効であると実感しましたね」と語った。
執行役員 組織開発本部長 池谷達也(一番左)と 総務課メンバー
※掲載内容は取材当時の情報です。